恋の治療は腕の中で
先生以外のスタッフで診療開始時間まで掃除をしていると、いつもより少し早目に先生方が院内にやってきた。

「えー、ちょっと手を休めてこっちに来てくれないか。」

医院長が私達に遠慮しながら声をかけてきた。

医院長なんだから遠慮しなくていいのに。
なんて 考えていると、


「おーい、藤堂くん。」


カチャ


「えー、こちらが今日からここで働いてもらう藤堂くんだ。」


藤堂くんは、一歩前にでて



「藤堂 悠文 です。

よろしくお願いします。」


ニコリともせず無表情で挨拶をした。


藤堂先生は、背は185cmと高く医者とは思えないほど、均整のとれた体つきをしていておまけにかなりのイケメン。



いくら見た目がよくっても何あの態度。

どうせ私達のことを見下してるんでしょ。

俺はドクターだとか思って。

もしあんな態度を患者さんにしたら一言言ってやるんだから。


ムッとしてる私に気づいた医院長が、

「まぁ、藤堂くんも初顔合わせで緊張してるだろう。

ほらっ、皆も自己紹介して。」


「歯科衛生士の望月 紗和です。

開業当初からおりますので、分からないことがあれば何でもおっしゃって下さい。」

私は、にこやかに自己紹介した。

ふっ、これが社会人としての大人のマナーよ。

「分からないことがあれば、他のドクターに聞くからお構い無く。」

相変わらずの無表情で藤堂は言い返してきた。(藤堂でじゅうぶんだわ。)

何なの、あいつ!

この世でドクターが一番偉いとでも思ってるんじゃない。


何か聞かれても絶対教えてやらないんだから。


第一印象最悪な私達の出会いだった。







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