恋の治療は腕の中で
「どうした?」


はっ 私ったらまた沈んでたかも。


「ううん、何でもない。」

私は精一杯の笑顔を見せた。

でも彼はそんな私に


「紗和は、俺には隠し事できないよ。無理して笑ってるのバレバレだよ。」


悠文に頭をこつんと叩かれた。

何で悠文には分かっちゃうんだろう?今まで誰にも気付かれずにやってきたのに。

「ほらっ、言いたいことがあるなら言ってごらん。」

このまま貴方を信じていいの?ホントに私からいなくならない?

そんなこと言えないよ。


下を向いたまま何も言わずにいると突然


ぎゅっ

悠文が強く抱き締めてきた。


「悠文?」

「紗和には自分の思ってること我慢しないで話して欲しい。でも急には無理だよな。ゆっくりでいいから。俺は紗和が話してくれるまでちゃんと待ってるからさ。」


悠文の声は優しくてとても暖かく感じた。

悠文の事を信じられたらどんなに幸せかと思う。でも何を信じればいいの?貴方は私のことどう思ってるの?言葉にしてくれなきゃ分からないよ。

でもそんなこと言えないよ。もし言ってしまって答えが違うものだったら今の私は耐えられそうにないから、それなら今のまま少しの間でいいからこの心地よい悠文の温もりを感じていたい。

少しの間でもいいから……。



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