恋の治療は腕の中で

水曜日になり私達は、前に住んでいた（そう！火事になり住めなくなった）アパートの大屋さんのお宅に伺っていた。

私一人で行くつもりでいたところ悠文も心配してついてきてくれた。


「紗和ちゃん、あれからどう？ 本当にごめんなさいね。

でも良かったわ。こんな素敵なフィアンセがいてくれて。」


「なんとかやってます。それに大屋さんのせいじゃありませんから。気にしないでください。」


「今日わざわざ来てもらったのは、実はあのアパートを取り壊すことにしたのよ。」


えっ？


でもそうだよね。あのままじゃ誰も住めないもんね。
お父さんが死んでから私はずっとあのアパートに住んでいた。あの部屋は私が一人で生きていくと決めた場所だ。




「紗和？ 大丈夫？」


「あっ、ごめんなさい。なんだか色々な事を思い出してしまって。」


「そうよね、ほんとに申し訳ないわ。」


「そんな、ごめんなさい。私こそ大屋さんに気を使わせてしまって。私は大丈夫ですから。」


「それで、このアパートを取り壊すことはわかりましたが、紗和が呼ばれた理由はなんですか？」


「そうそう、来てもらったのは、水浸しになって使えなくなったと言っても紗和ちゃんの物だからこちらで処分するにしても紗和ちゃんの許可が必要なのよ。」

「あ～なるほど。紗和はどうしたい？」


悠文は、心配そうに私に聞いてきてくれた。

「処分は大屋さんにお願いします。でもその前にもう一度部屋をみせてください。もし、もって帰れそうなものがあれば持って帰ります。」


「そうよね。それじゃあこれから行ってみましょう。」


「お願いします。」