恋の治療は腕の中で
診察室を開けるといつもなら患者さんを通してから現れるはずの悠文が既にいた。

うわっ!

私に気付くと何も言わずに椅子から立ち上がる。

無言はやめて~。恐すぎるから。
私は近づいてくる悠文に壁際に追い詰められる。


ドン!


これは!まさかの壁ドンですか?

私には一生縁のないものだと思ってたのに。

うわー。

「ご、ごめんなさい。」

気がつけば私ったら何も言われてないのに謝ってた。

「何に謝ったの?」


えっ。

「いや、何となく。」


「紗和は、何もしてないのに謝るんだ。」

ですよね。

「さっきの話しなんだけど、紗和俺に何か隠してない?」

ちょっと悠文顔近すぎ~。

「いやー、そのー。」

目を反らして曖昧に答えると悠文が顎を持って自分の方へ向ける。

「俺の目を見てちゃんと言ってごらん。」

悠文と目が合うともう誤魔化すことができなくなる。
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