春、君を想う
式は、淡々と進み、無事に終わった。私は、式のどさくさに紛れ、シュンを想い、泣いた。

泣いたって戻ってこないし、どうすることもできへんけれど、涙はとめどなく流れた。

電車に乗って、団地に戻ってきた。シュンのために手向けられた花が、雨に濡れていた。私は、卒業式でもらった花を、シュンのために手向けた。

「卒業、おめでとう」

小さく呟くと、そっと手を合わせた。

「サキちゃん」

その声に振り向くと、シュンのお母さんの姿があった。胸が痛む。何も言えずに会釈をした。

「これ、サキちゃんに」

小さな紙袋を受け取った。紙袋には、私の名前が書かれていた。シュンの字で。

「ありがとう…ございます」

シュンのお母さんとは目も合わせられないまま、ぺこりと頭を下げる。

「あの子の学ラン…」

ポツリと呟く姿を、前髪の隙間から上目遣いで見つめる。

「上から二番目のボタンが、外れてた」

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