蒼天の絆~夜空の琥珀2~
▼幸せだったから:郁人side
自分でも、意気地がないことはわかっていた。
呼びとめる声を振り切り、逃げ出すことしかできなかったのは、自分が弱かったからだ。
『大変! また熱を出しちゃったのね!』
……頭が痛い……。
それなのに、声が脳内で響き渡る。
能天気で優しい、母の声が。
『ちょっと待っててね。すぐにおかゆ作るから』
『……いらない。食べたくない』
『ダーメーよ。具合が悪いんだから、尚更食べて体力をつけなきゃ』