続 でも、好きなんです
終わりのはじまり
たどり着いたその先
甘く切ない、あの夜の記憶。
ずっと憧れていた山村課長と、初めて結ばれた。
言葉では、とても言い表せない圧倒的な幸福感、高揚感。
完璧な上司だった彼が、私に対して、初めて男としての姿を見せた、あの夜。
ずっと、知りたかった。
彼が、女性を抱くとき、いったいどんな表情を見せるのか。
どんなふうに、体に触れるのか。
あの日、すべてを教えてくれた。伝えてくれた。見せてくれた。
抱き合っている間じゅう、彼から目が離せなかった。
ドキドキしすぎて、頭が変になりそうだった。
彼の腕の中で、自分は今、世界中で一番幸せだと心の底から思った。
「最低だと思うけど、今、ものすごく幸せだ。」
すべてが終わった後のベッドの上で、課長は言った。
無機質なビジネスホテルの部屋には、空調の音だけが静かに響いていた。
「私も・・・です。」
彼を突き動かす欲望は、もう尽きているはずなのに、彼は再び、激しいキスを私に浴びせた。
素肌のままの私の肩に再び触れる彼のてのひら。
「柔らかい。」
彼の言葉に、クスクス笑いで返す。
「好きだ。」
既婚者である自分が、好きだなんて言えないと言っていたのに。
「好き。」
私もそう声に出して言った。
「好き、すごく好き。」
何度も何度も、言葉を重ねる。
ずっとこのままでいたいと思うのに、楽しい時間の終わりは、すぐにやってきてしまう。