続 でも、好きなんです
「河本さん、ごめん、このデータなんだけど・・・。」
私が作成した紙資料を手にして、課長が入ってきた。
私の姿を見て、動きを止める。
「あ、えっと・・・。」
(課長、なんで固まってるのかな・・・?
って、あ、私、窪田さんの上着・・・?!)
「あ、課長・・・えっと、あの、これは・・・。」
今度は私が固まってしまった。
なんと言っていいかわからず、口ごもる。
っていうか、そんなに取り乱すのも、逆に変だよね・・・。
「・・・あ、いや、窪田君・・・。」
そう言って、課長は、ふうと息を吐いた。
「君って、ほんっと油断ならないね。」
課長の言葉に、窪田さんはそ知らぬふうだ。
「え、なんですか?」
「あ、課長、あの、私が寒かったから、窪田さんが、貸してくれたんです。」
私は、その場を取り繕うように言った。
「そっか。
言ってくれたら、俺の上着も貸したのに。」
課長の言葉に、また固まってしまう。
会社で、課長がこんなふうに言うのは、はじめてのことだった。
課長は、少しも冗談めかした様子じゃなくて、むしろ怒っているようにすら見える。
「ああ、ごめん、取り込み中だったね。
終わったら、僕のところまで来てくれるかな。
資料のことで、ちょっと聞きたいことがあったから。」
そう言うと、課長は会議室を出て行った。
課長が出て行ってしばらくして、今度は窪田さんが、あーあ、とため息をついた。
「逆効果・・・だったかな。
課長をマジにさせちゃったかもね。」
「え・・・?」
私がぽかんとしていると、窪田さんが続けて言った。
「・・・わかんない?
河本さんって、ほんとニブいね。
あれ、嫉妬だよ。明らかに。」
嫉妬って・・・、あの課長が・・・?
そんなこと、あるわけない。
「そんなまさか・・・。」
「なんで?」
「だって、課長はいつも余裕があって大人で・・・。」
窪田さんが、はあ、と呆れたように言った。
「そういう余裕がなくなるのが、好きってことでしょ。
・・・そういうの、ニブいふりなの?もしかして。
私なんて、って男の前で行って、反応楽しんでる?」
窪田さんまで、怒っているみたいな顔をしている。
「・・・そんなつもりじゃ・・・。」
どうしていいかわからなくなって、うつむいてしまう。
窪田さんが近くに寄ってきたと思ったら、突然壁に押し付けられる。
「・・・河本さんって、素直で可愛いけど、時々、本気でいじめたくなる。」
どうして、窪田さんまで怒ってるんだろう。
怖いのに、ドキドキして、窪田さんと目が会わせられない
窪田さんは、優しいのに、突然男の人になる。
気持ちの準備が出来なくて、怖い。
この間の広瀬君の冗談混じりの壁ドンなんかとは、全然違う。
ドキドキしすぎて、胸が破裂しそう。
「そんなふうに言われたって・・・
私、よくわかりません。」
「…いつもそうやっていい子ぶる。
きっと、課長もムカついてるよ。
聖人君子みたいに扱われてさ。
河本さんはいいよ、期待を裏切られたら、傷ついたって思ってたらいい。
…だけど、僕も課長も生身の男だよ?」
「いい子ぶってなんか…。
窪田さん、どうしてそんなひどいこと言うんですか?」
私がそう言ってじっとうつむいていると、
窪田さんは、諦めたように息をついて、そっと体を離した。
「…そんな顔で見ないでよ。」
私が作成した紙資料を手にして、課長が入ってきた。
私の姿を見て、動きを止める。
「あ、えっと・・・。」
(課長、なんで固まってるのかな・・・?
って、あ、私、窪田さんの上着・・・?!)
「あ、課長・・・えっと、あの、これは・・・。」
今度は私が固まってしまった。
なんと言っていいかわからず、口ごもる。
っていうか、そんなに取り乱すのも、逆に変だよね・・・。
「・・・あ、いや、窪田君・・・。」
そう言って、課長は、ふうと息を吐いた。
「君って、ほんっと油断ならないね。」
課長の言葉に、窪田さんはそ知らぬふうだ。
「え、なんですか?」
「あ、課長、あの、私が寒かったから、窪田さんが、貸してくれたんです。」
私は、その場を取り繕うように言った。
「そっか。
言ってくれたら、俺の上着も貸したのに。」
課長の言葉に、また固まってしまう。
会社で、課長がこんなふうに言うのは、はじめてのことだった。
課長は、少しも冗談めかした様子じゃなくて、むしろ怒っているようにすら見える。
「ああ、ごめん、取り込み中だったね。
終わったら、僕のところまで来てくれるかな。
資料のことで、ちょっと聞きたいことがあったから。」
そう言うと、課長は会議室を出て行った。
課長が出て行ってしばらくして、今度は窪田さんが、あーあ、とため息をついた。
「逆効果・・・だったかな。
課長をマジにさせちゃったかもね。」
「え・・・?」
私がぽかんとしていると、窪田さんが続けて言った。
「・・・わかんない?
河本さんって、ほんとニブいね。
あれ、嫉妬だよ。明らかに。」
嫉妬って・・・、あの課長が・・・?
そんなこと、あるわけない。
「そんなまさか・・・。」
「なんで?」
「だって、課長はいつも余裕があって大人で・・・。」
窪田さんが、はあ、と呆れたように言った。
「そういう余裕がなくなるのが、好きってことでしょ。
・・・そういうの、ニブいふりなの?もしかして。
私なんて、って男の前で行って、反応楽しんでる?」
窪田さんまで、怒っているみたいな顔をしている。
「・・・そんなつもりじゃ・・・。」
どうしていいかわからなくなって、うつむいてしまう。
窪田さんが近くに寄ってきたと思ったら、突然壁に押し付けられる。
「・・・河本さんって、素直で可愛いけど、時々、本気でいじめたくなる。」
どうして、窪田さんまで怒ってるんだろう。
怖いのに、ドキドキして、窪田さんと目が会わせられない
窪田さんは、優しいのに、突然男の人になる。
気持ちの準備が出来なくて、怖い。
この間の広瀬君の冗談混じりの壁ドンなんかとは、全然違う。
ドキドキしすぎて、胸が破裂しそう。
「そんなふうに言われたって・・・
私、よくわかりません。」
「…いつもそうやっていい子ぶる。
きっと、課長もムカついてるよ。
聖人君子みたいに扱われてさ。
河本さんはいいよ、期待を裏切られたら、傷ついたって思ってたらいい。
…だけど、僕も課長も生身の男だよ?」
「いい子ぶってなんか…。
窪田さん、どうしてそんなひどいこと言うんですか?」
私がそう言ってじっとうつむいていると、
窪田さんは、諦めたように息をついて、そっと体を離した。
「…そんな顔で見ないでよ。」