【短編】バスケ部の不良野郎【BL】

「佐倉、次は取られるんじゃないぞ」

「は、はい」

 同じチームの部長からプレッシャーをかけられ、暁月はこの上なく焦った。

 副部長の笛の合図で暁月にパスが回り、今度こそとられないようにボールをゴール下まで運ぶ。

 暁月がシュートをしようとボールを上げたとき、琉華の腕が伸びて来てボールを取られそうになった。

 すぐさま腕を引いて琉華に背を向ける。

 琉華をよけようと内側に踏み込んだとき、滑らないはずの右足のバッシュが勢いよく滑った。

 暁月が琉華を押し倒す形で、体育館全体が震えるほど大きな音を立てて転んだ。

 体育館中に響く琉華のファンの女の子たちの悲鳴。

 やってしまった。

 そう思った暁月はすぐさま起き上がり、琉華に声をかけた。

「音駒、大丈夫か…?」

「ああ…なんともない」

 琉華もすぐ起き上がり、立ち上がった。

 琉華を心配してチームメイトも駆け寄ってくる。

「平気ッス」

 みんなに向かってそう言った直後、琉華がふらついて、後ろに倒れた。

 暁月がとっさに琉華の体を受け止めたときに、暁月の手に生ぬるい何かがついた。

「音駒、お前、血が…」

 暁月の顔から血の気が引いて、いろいろな思いが頭を駆け巡った。

「大丈夫だって…」

 琉華はそう言ったが、副部長らに保健室に運ばれた。

 運ばれる前に琉華が舌打ちをした。

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