キライになりたい曲
『この曲、好きなんだよね』
なにげなく、彼はいった。
いつの間にかお決まりになってた
お互いのプレイリストの聴き合いっこ。
星をみにいきたいと、私のわがままに、
仕事おわりの深夜。
眠気覚ましにタバコをふかしながら、
海へと車を走らせてくれていた彼が、
『あ、そうだ』と。
赤信号でiPhoneを操作して、流した曲。
キツネに似ていた一つ年下の彼は、
いつでも楽しそうに話していたけれど、
時々とても落ち着いていた。
その日も、そうで。
助手席から彼の横顔を盗みみると、
月明かりに照らされた彼が、
どこか遠くにいる気がしたんだ。
車内に響く音楽が、
不確かな感覚を確信に変えていく。
『…ねぇ。
今、だれを想ってる?』
付き合って、まだ3ヵ月。
はじめてのクリスマスを前に、
ペアリングを買いあったばかりだった。