キライになりたい曲
ー凛冬。
大好きだった、彼の名前。
「まって、名前聞くだけで思い出す」
はじめて凛冬をみた日のこと、
はじめて話した日のこと、
はじめてごはんに行った日のこと、
デートを重ねて、
好きだと、伝えあった日のこと。
…これ以上は思い出したくなくて、
かき消すように頭を振った。
夏海にかざした手のひら越しに、
夏海が困った顔をする。
「….秋季(あき)さ、
別れた日のことちゃんと覚えてる?」
「…え?」
「自分の彼女にさ、
他の人を想った曲聴かせて、
挙げ句の果てに
まだその人が好きかもしれないなんて、
最低だからね?」
「…わかってるよ」
わかってる。
だから別れたの。
好きだったけど、
大好きだったけど。
大好きだったから、別れたの。