あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
実はあれ、単なる防御壁で、静電気立ててたけどまだきちんと雷を出すことはできなかったんだ。
雷召喚用の魔法陣を展開していたなら攻撃できたけど、防御壁用の魔法陣だったから。
相手が勘違いしてくれて助かったなぁ……。
未だに落ち着かない激しい心拍音をどうにかしようと深呼吸をしていると、足もとにひょっこりと猫姿のシュガーが現れた。
擦り寄ってきて、あたしのふくらはぎに長い尻尾を絡ませる。
〈急に突っ込んでくから驚いたぜ〉
「ゴメン。 あの人守らなきゃって思ったら、思わず身体が動いちゃって……」
〈ったく……気をつけろよ。止めに入ってお前が傷ついてたら、元も子もねぇだろ〉
「……はい」
鋭い口調で注意はされたけど、怒ってはないみたい。
今回ばかりはよくやった、とシュガーが思っていることが伝わってきて、少しだけ嬉しくなった。
黒猫は困ったことに、もう疲れた、と後ろ足で器用に立って前脚を突き出し、抱っこを催促するので仕方なく抱き上げると、そのまま肩に乗せてもう少し戦場を回ることにした。
今はここの辺りは休戦中みたいで、銃声などは聞こえないし、魔方陣も見えない。