あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。






 訓練のときに倒れてから、カカオと顔を合わせるのがどうしても、気まずくなってしまった。


 カカオと廊下ですれ違うたび、身体のどこかが、変な音を立てるんだ。

 
 もう、なんなのかなぁ……。


全てはあの夜のせいなんだけどね。


そりゃ、男子と同じベッドで寝るなんて、小学生でもやらなかったし。


でもしばらくたてば、互いに忘れて気楽にやれるでしょ。


シュガーだって一緒にベッドに寝てたことあったんだもの。


そう、そうだ。


大っきな猫と寝てたと思えばいいんだ!


あー、なんだ、解決した。



もう、空が赤くなり始めている。


空に茜色のグラデーションが広がっていく。


黄昏時だ。


きっと、今日の侵略は終わるはずだ。


毎日ちょっとずつクコに教えてもらっているオスガリアとの戦争の状況。


オスガリアは突然攻め込んでくるが、それは大体日が陰り始める頃に一旦終わる。


まるで、己の力を試しているかのようだ。


本格的に国内に、王都を占拠しようとしたことはない。


けれど、回を重ねるごとに、進軍する距離が伸びてきているのが現状だった。


また今回も範囲を広げられたのだろう。


そしてまた、黄昏時に引き上げていくはずだ。


特に大きな歓声も、なにも聞こえなかった。


今日もいつもと特に変わらず、終わったのだろう。


なら、カカオは無事だ。



「とりあえず、他に怪我人がいないか見て回ってから帰ろっか」



 カカオにバレないうちにね。




「気をつけろよ」

「わかった、ありがとね」



 シュガーも頷いて、人間の姿になり、あたしとは別の方向へ捜しに行った。


 あたしもテクテク歩いて辺りを捜索する。


 よーし、このあたりはもういいかな。


 血の跡とかもないし、戦闘したような様子もないし、ここでは戦ってなかったのかな。



魔力を集中させて、まるで薄ーい風呂敷を広げるようにして魔力を広げる。


この方法で周囲に魔力を持つ者がいるか捜してみたけど、いなかったし。


 あっちの森の方にも行ってみよう。


 あたしは鬱蒼としている森に、意を決して乗り込んだ。




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