あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。




 そのとき。



「──っ、なにっ……!?」



 異様な空気が、辺りを包み込む。


 くっ……。


 咄嗟に魔方陣を出そうとするも、魔力が何かに反抗されて、出すことができない。


 本当ならこのまま、強引に出すこともできるかもしれないけど、あたしのまだ安定してない魔力じゃ、無駄に消費するだけで意味をなさない……。


 それに……身体が、自由が効かない……!


 何とか動くのは、首から上だけ。



「……っっ‼︎」



 その首を動かすと、木々の奥に、人影が揺れた気がした。


 先程からかろうじて切らずに保てている【魔力探知】にも、微量に反応してる。


 もしかすると……ウェズリアの魔術師?


 いるなら、助けて!


そう、叫びたいのに。


 喉が強張り、声にならない。


 なに?


 本当に何が起こってるの?


 もう一度、辺りを見渡したときだった。


視界が突然急転した。



「っぁ!」

「──お前、何者だ」



突然顎を凄まじい力で捕らえられる。


 低い抑揚のない声が、静寂の森に響く。


 顎が圧迫され、うまく呼吸ができない。


 つまり、この人に顎を大きな手でがっしりつかまれていた。




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