あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
「さっきから、『ここはお前のいるべきところではない』って言ってるけど、この森はなんなの? なぜ、あたしがいちゃいけないの?」
どうやらあたしの好奇心は、恐れを知らないようだ。
期待を込めて、彼の顔を見つめて問うと、彼は冷たい表情で漆黒(中は深紅のベロア素材)のマントをバサリと翻した。
「少し、話しすぎたな……」
「え、ちょ、まっ……!」
彼が、行ってしまう。
まだ、質問に答えてもらっていないのに。
必死に、その高い背中を追いかけようとした。
けれど……。
次の瞬間、異常なほどの睡魔があたしを襲った。
瞼が鉛のように重くなり、意思とは逆にどんどんと落ちてきてしまう。
なに、これっ……!
まさか、アルバートが……?
そう思って、なんとかアルバートの顔を見るけど、視界がぼやけてしまい、うまく捉えきれない。
しばらくすると、身体の力も抜けきってしまい、ドサリとあたしは森に横たわった。
それを見たアルバートは、マントを翻すと森の奥に消えていく。
その高いスラリとした背中をなんとか見つめていると……プツリとあたしの意識はそこで途切れてしまった。