あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
「お前は、“クライヴの森”の入り口で倒れていたところをシュガーに発見されたんだ」
「クライヴの森……」
それって……あの、ヴァンパイアに会った?
あたし、あのあと突然睡魔に襲われて……それで……。
「ただ寝ていただけのようだが、ケガや痛いところはないか? クコに言って治癒魔法をかけさせるが……」
「大丈夫だよ……」
「そうか……」
カカオは安堵したような顔をする。
けれど、それは一瞬のこと。
すぐに険しい表情へと変わる。
「まお! お前、なぜ俺に言わずに戦場に来たんだ! お前はまだ実戦慣れしていない。 なのに、シュガーに聞けば魔術師を助けるために自分の命を省みず突っ込んでいったそうだな。 自分が傷ついたらどうするんだ!」
カカオのあまりの剣幕にビクリと身体が反応してしまう。
内容は、シュガーに言われたことと同じだったのに。
カカオが、怒った……?
いつも無表情か、不機嫌でも表情を少し歪めることしかしなかった、カカオが……?
困惑のあまり、頭が正常に働いてくれない。
すると、突然腕を力強く引き上げられ、圧迫感が上半身を襲った。
「っっ!」
突然の抱擁。
状況を理解できないあたしは、そのまま固まってしまう。
カカオが、あたしを抱きしめてる……?
彼の吐息が、耳に当たってくすぐったい。
「──無事で、よかった……!」
耳を疑ってしまった。