あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
もしかして……。
ある予想が脳裏を過ぎり、頭を振った。
いやいやいや。
そんなワケ、ある?
それでも、目の前に広がる景色は現実で……。
予想が、正しいのだと、思い知らされた。
『ここは、異世界なんだ』
と、いうことを。
だって、紫の池なんて、実際に見たことある⁉︎
ないよね!
ありえないもんね! 現実的に!
人工的に作ったならまだしも、こんな大自然の真ん中で紫の泉はない。絶対に。
あたしはわりとポジティブな方だ。
ってことはあたし……。
王子様が迎えにくる!?
ここが異世界なら、この風景からしてここは魔界だよね!?
うん、そうだ。
そういうことにしておこう。
そして、このシチュエーション、どっかで見たことある気がする……。
パッと辺りを見渡すと、ベンチに置いてあった見慣れた革のスクールバッグが落ちていた。
どうやら、運良く一緒にこちらに来たらしい。
そのカバンの横にあたしの大切な大切な宝物が落ちていた。
これこそ、今のあたしに一番大切なもの!
今のあたしにとってのバイブル!
異世界トリップ物語〜!
このお話も女子高生が異世界にトリップしてしまうお話だ。
これを今のあたしに置き換えたとして……。
そしたら、あたしは地球から来た、物語のヒロイン。
だとしたら、そろそろ、この異世界の王国から白馬に乗った王子様があたしを助けに……。
得意の妄想をしながら、ニヤニヤしていると……。
案の定、軽快な馬の走る足音が聞こえた。