あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。



そのまま儀式は滞りなく進み、あたしの魔女としての任命式は終わった。


カカオと共にあの闇の中を通り、城へ戻ると扉は音もなく閉まり、また新たな魔女が現れる時まで、開くことはないだろう。


儀式を無事終えたことをクコたちに報告すると、クコはまるで自分のことのように喜んだ。


他にもやることがあるらしいカカオは部屋へ来るように言った。


〈魔女の証〉(長いので対話をするときは〈アカシ〉と呼ぶことにした)を異空間に仕舞い、儀式の時の服そのまま、カカオの部屋へと向かった。



「失礼します」

「入れ」



中へ入ると、どきりと心臓が高鳴った。


カカオが満面の笑みを浮かべていたからだ。



「儀式、お疲れだったな、まお。 無茶を言ってしまったが、よくやってくれた」

「……いえ」



あまりの笑顔の破壊力にすぐに返事をすることができず、できたとしてもとても素っ気ないものとなってしまった。



「無事、〈魔女の証〉に主と認められたんだな」

「えーと……一応?」



なんとも曖昧な答えだけれども、これが真実なのだからしょうがない。


なんかアカシの反応イマイチだったしなぁ……。


はっきり断言できないのが苦しい……!



「ともかく、よかった」



そう言ったカカオは、また美しい微笑を浮かべて、その無骨な指であたしの頭をくしゃりと撫でた。


心臓が、保ちそうもないよ……。


儀式を突然やるって言われるより、何倍も破壊力があるんだもの。


カカオは本当に狡い……。



「今日はもう、訓練もなくていい。 俺は書類整理で共にすることはできないが、しっかりと食事を取り、早く休め」

「はい」



部屋を退出し、自分の部屋に戻るとあたしはすぐにベッドに突っ伏した。


どっと疲れが押し寄せてくる。



〈おいおい、その姿のまんま寝るなよ〜。 これからメシもあるだろぉ。 俺腹減ったよ〜〉



いつの間に入って来たのだろうか、シュガーが柔らかな肉球で、あたしのほっぺを突いてくるけど、もう限界。




「お、や……すみ……」

〈おい! おい!まお! 寝るんじゃねぇよ!ああ、もう! クコ! まおがその姿のまんま寝ちまう!〉




微睡みの中、シュガーの声とクコの声が入り混じり、何とも良い子守唄となって、あたしの意識は深く沈んでいった。





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