あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
「…………なんですか、これ」
隣でクレアがポカーンと立ち尽くしている。
「なにってお風呂だけど」
あたしはそういいながら、身体にタオルを巻き付けると、やっかいな天パの髪をなんとかゴムでまとめ、脱衣所を出る。
「いくらなんでも……大きすぎませんか」
「確かにおっきいよね~。 これ、お風呂屋さんすればいいのに」
歩くたび、ぴちゃんと濡れたタイルが音を立てる。
湯気がむわむわとお風呂中を満たしている。
大きな浴槽は、プールほどのサイズがあり、大きな金で出来たライオンの口からは、滝のようにお湯が流れ出ている。
浴槽も職人が腕を振るい、まるで飴細工のような飾りをあしらってある。
あたしはいつもは、別の部屋の小さなバスタブを使わせてもらっている。
猫足のついた、可愛いバスタブ。
一人でも余裕なくらい大きいんだけどね。
こんな豪華なお風呂は、初めて使わせてもらった。
いつもは、カカオとか王族とかしか使ってないみたいだし、それに魔法を使えるウェズリアには、あまりお風呂に入るという習慣がないみたいで、ここは滅多に使われていない。
そんなとこを使わせてもらえるなんて……ちょっと豪華すぎるけど……。