あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
あたしはカカオに笑顔を見せると、背を向けた。
「……まお」
「ん? どうしたの?」
突然呼び止められ、あたしは再びカカオと向き合った。
うつむいているせいか、長い前髪で表情が隠れてしまって見えない。
その雰囲気は、いつもと違う気がした。
「……俺がどんな答えを選んでも……まおは俺を信じてくれるか……?」
いつも自分の発言には自信満々な彼には、珍しい弱々しい声。
上げられた顔は、どこか悲しげだった。
「そんなの──当たり前じゃない。 だってあたしは……」
「『あたしは……』?」
自分で口にしてから、気づいて口に手を当てたときにはもう遅かった。
「なんでもない」
「ウソだ。 なにか言いかけた」
「……ほんとに、なんでもないの」
何でも、ないんだよ……。
そういって、自分でどうしようもなく切なくなった。