あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
「あっ、ありましたわ。 カカオ様ー! こちらに大きなブルーベリーがありました」
ブルーベリー狩りに出ると、ようやく姫は離れてくれた。
けれど、しょっちゅう姫は俺を呼んでつれまわす。
「本当だ、大きいですね」
「ええ。 あ、そうだわ! たくさん摘んだら、料理長に頼んでブルーベリーパイでも作ってもらいましょう! ジャムにしても美味しいわね」
「そうですね」
愛想笑いで姫の猛アタックを躱す。
それよりも、こんな悪環境の中で作物は滅多に育たないだろうに、お菓子が作れるということは本当に税を巻き上げて王族のみがこんな贅沢な生活をしているのだろう。
早くこの問題を片付けなければ、この国の一番の被害者である国民たちがどれだけ傷つき、倒れていくのだろうか。
俺は、本来ならこんな風にのんびりと過ごしていていいはずではないのに……。
真夏の暑さで、やられてしまったのだろうか。
ぼんやりとしていた思考が停止しかける。
姫は今度は俺から離れずにブルーベリーをかりはじめた。
もう、今は諦めるしかない。
意を決して俺たちはそれからさらに30分、ブルーベリー狩りに没頭した。