あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
部屋に入ると、まおは白の薄い寝間着を着て窓際に立ち、外を見つめていた。
ふわふわと舞う黒髪は、夏の風に揺られていて、思わずドキリとしてしまう。
そして、その青い瞳は、遠いどこかを見据えていた。
俺にはわからない、遠いどこかを。
「寒くないか」
「大丈夫だよ、そろそろ寝ようと思っていたし」
「そんなときに押し入ってすまないな」
「別に迷惑だなんて思ってないよ。 久しぶりにカカオに会えて嬉しいし」
まおは、無邪気なあの笑顔を浮かべる。
また、鎖骨のへんがきしきしと切なくなった。
「お姫さまとはどう? 相変わらず?」
「ああ、相変わらず疲れる」
「そんなこと言ったらかわいそうよ」
首をコキコキ鳴らしながら言うと、まおは急に真剣な顔つきで言った。
突きつけられた指先が、今にも鼻に当たりそうだ。
「結局、どうするかは決めた?」
どうするかとは、姫とのことか……。
いつものまおは、久しぶりに会ったとしてもオスガリアの姫のことをあまり聞いてこようとはしない。
けれど、今日は……何かが違う。
気のせいか……?