あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
「守護神と呼ばれるものが天使だったとはな……オスガリアに天使がいたというのは、驚きだ……」
「そんなに珍しいことなのか?」
「ああ」
俺は持っていた本をパタンと閉じて、指で表紙を叩き、命令すると本はフワッと浮いて、元の場所へと戻っていった。
そして、指を操ると、別の本棚から一冊の本がフワフワと浮いて俺の手の中におさまった。
「天使や神は神聖なものとされている。 普段、ルクティアから出ることなどない。 出れば、即連れ戻され、処罰される。 もしくは、ルクティアの恥と言われ、記憶と人格を消されるらしい……」
「……怖っ!」
シュガーは自らの身体に腕を巻付けると、身震いした。
「でも、オスガリアには天使がいた……」
「そこがまだ謎だ」
ここまではなんとか〈魔女の証〉からの情報でわかったが、流石に魔力の及ばないオスガリアの内部の詳しいことまでは知り得なかったのだろう。
どうしてオスガリアに天使がいたのかは、わからず、図書館の中を調べてみたものの、どの本にも載っていなかった。
……これが限界か……。
「でもよー……」
シュガーが机の上に寝そべった。
「これが〈魔女の証〉が言ってたオスガリアの弱点なのか? オスガリアには天使がいたってことだけじゃねーか」
シュガーがコンコンと、指先で革表紙の本を叩く。
「たしかにこれが相手との交渉に使えるかどうかはわからんな。相手の弱点もそうだが、姫がまおに話した内容……。あれは本当だろうか……」
「……嘘な訳ないだろ。 それに、俺にもわかる気がする。 まおがなんで防御結界を張ろうとしたのか」
「本当か⁉︎」
「本当か?って、王子、話聞いてわからなかったのかよ」
「いや、わかったんだが……どうしてまおがそこまでしてくれるのか……それがわからない」
「……鈍すぎかよ」