あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。





 カカオはコホンとひとつ、咳ばらいして、無表情になる。


 な、なによ。


 なんか、怖いな……。



「まお、前に俺にはキスすることであらゆるものを“再生”できるといったよな」

「……? うん」



 あたしは首を縦にふる。



「だから……した」

「…………なにを?」

「だから…………キスをだ」



 …………あたしに!?



「き、きききキスって、どどどどこにしたのよっ!」



 明らかにテンパっていることがバレる喋り方になってしまった。


 けれど、暴れる心臓を抑えることができない。


 カカオはあたしの質問に無言で答えると……トントンと自らの唇を叩いた。


 ウソだ……。


 脳がクラリと揺れた。


 あたしとカカオが、キスした?


 それで、カカオの力によってあたしは目覚めたっていうの?


 んなバカな。


 いくらラブファンタジー小説好きのあたしでも、そんなことは現実では起こりうることはないことなど、とっくにわかっている。


 どこぞのお姫さまと王子様の物語なの?


 よく出来てるわ。


 そう、とぼけてしまいたいけれど……。


 カカオのあまりの真剣さに、これは現実だということを思い知らされた。






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