あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。





「ななな、なんで……」

「まおに一刻も早く目覚めてほしかったからだ」



 そりゃ、そうだろうけど。


 今、オスガリアとウェズリアは、一触即発状態だし。


 少しでも戦力欲しいだろうしね。


 
「あっ、そういえば結界は……!」



 あたしが命懸けで張った防御結界!


 どうなったの?


 動けないため、ベッドから窓の外を目を懲らして見ると、そこには相変わらず透明な結界が張られていた。


あたしの部屋は3階だから、地表から少し遠いけれどアカシの魔力も確かに感じる。



「よかった……」



 とりあえず、残ってる。


 安堵感から、胸を撫で下ろし、あたしは大きく息を吐いた。



「バカ!」



 突然の怒鳴り声に、肩が大きく揺れてしまう。


 もちろんその声の主は、カカオで……。


 とても厳しい顔をしていた。



「なぜ、勝手にひとりで防御結界を張ろうとしたんだ! 前に一人で無理をすることは禁じたはずだ! あれを張るには、しかもひとりでなんて、とても困難で危険なことなのに、なぜ、俺に言わなかった!」



 カカオのその顔を見ていると、ズキリと胸が痛んだ。


 国を守りたいから。


 だから、カカオはオスガリアの姫と結婚するのだと、そう思っていた。


 あたしの勝手な願いで、カカオにローズ姫と結婚してほしくなくて。


 カカオは国を守るために結婚しようとしている。


 もともとむこうは、平和協定を結ぶ気はない。


条件を断れば、たちまちウェズリアを侵略しにくる。


 だったら、侵略できないよう、国を守れるようにすれば、カカオがローズ姫と結婚する理由もなくなる──。


 そう思い込んでしまったんだ。


 勝手に結界を張って、ウェズリアの戦力とならなきゃいけないあたしは、倒れて意識不明。


 もし、オスガリアと戦うことになってしまったら、ウェズリアは危機に襲われてしまうのに……。


 そんなふうにカカオが言っている気がして、あたしはうつむいた。


 
「今、こんな状況の中で、まおがいなくなったら、困るんだ!」



 ほら、やっぱりカカオはあたしのことを『魔女』としてしか、見ていない……。


 それが、どうしようもなく悲しくて、苦しい──。



「……まお?」



 気づけば、あたしの目頭からは、ポタポタと涙が溢れていた。




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