あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
やだ、泣きたくなんか、ないのに……。
それでも、意思とは別に溢れる涙は止まることを知らない。
「まお? どうしたんだ?」
カカオは途端に声色を和らげ、あたしの肩に手を伸ばす。
やめてよ、そんなふうに優しくしないで。
あたしのこと、なんとも思っていないのなら。
カカオはさらにあたしに詰め寄って、あたしの背に手を置いた。
「──やめてよ!」
あたしは、カカオの手を振り払ってしまった。
カカオは驚きを隠せないようで、振り払われた手を、あたしを呆然とした表情で、見つめる。
「どうして……」
そのカカオの鈍感さに、抑えていたものがついに爆発した。
「あたしを魔女としてしか見ていないのなら、優しくしないで」
自分でも想像できないくらい、低く冷たい声が漏れる。
「まおを魔女としか見ていない……? どういうことだ?」
「あたしが早く目覚めて欲しかったのは魔女としての戦力が欲しいからでしょう? 」
違う、本当はこんなことが言いたいんじゃない。
カカオの想いや今の状況を一番わかっているのに。
感情が溢れて止まらない……。
「それでもあたしはっ、カカオのことが……! っぅ!」
喚いていた言葉の最後の方は、突然遮られてしまう。
ドサリと、あたしはベッドに押し倒された。
もちろん、カカオに。
そして、次の瞬間。
再び唇に感じる感触。
今までに感じたことのない感覚。
それは、熱くてやわらかくて、そして、甘くて。
不思議と、頭がぼんやりしてきてしまう。
口を塞がれて、息ができない。
「っ……」
息をするヒマもなく、角度を変えて襲う彼の唇は、熱かった。
「っは……」
ようやく解放されたけれど、身体に力が入らなくて、あたしはベッドに倒れたまま。
「なに、して……」
「──魔女としてじゃない」
「え?」
耳を、疑った。
「俺は魔女が、ではなく、まおが必要なんだ」