あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
一瞬、ときが止まったのかと思った。
あたしのことが必要……?
魔女としてではなく……?
「それは、どういう……」
「言葉の通りだ」
思わずつぶやくと、カカオから鋭いツッコミが入った。
「だってさっき、今あたしがいないのは困るって……」
そういうと、カカオは表情を強張らせる。
そしてら身体を起こすと、右手で顔を隠してしまい、表情が見えなくなる。
「カカオ?」
「……自分でも女々しいと思う。まおが……意識がないと聞いて、何もできなかった」
「へ?」
「……まおの事を聞いただけで、他にも沢山やらなければならないことは多いのに、心配で他のことに手がつかなくなってしまったんだ」
それは……。
何となく、カカオの言いたいことが理解でき、身体がこれでもかというほど熱くなる。
けれど、まだちゃんと確信が持てない。
「だから、どういうこと?」
「……言わせるのか」
あたしはベッドに寝そべっているから、そのまま目を細めて返事を促すようにカカオを下から見上げた。
これくらいの意地悪は許してほしい。
乙女の唇、勝手に二回も奪ったんだもの。
それに涙だってそう安いもんじゃないんだからね!
しばらく見つめていると、観念したのか、彼は顔から手を外した。
彼の精悍な表情はどこか上気しているようにも見える。
碧みがかった紺碧の瞳は、熱を帯びて、あたしの視線を離さない。
「つまり、まおが、俺には必要なんだ。 まおが、大事なんだ」
そう言って、彼はあたしを抱き起こし、上半身を優しく包み込んだ。
「ふふっ、不器用」
「……うるさい」
「わかりづらいの」
「……そう言うまおは……?」
「……言わなきゃだめ?」
「人に言わせといてそれを言うか?」
どこか上目遣いになっている彼に、思わずきゅんとしてしまった。
「……あたしも、好きだよ」
彼ははっきりと言ってはくれないから。
代わりにあたしが伝えよう。