あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
「ちょっと紗桜! 説明して!」
まだひっついていた紗桜を強引に引きはがす。
というか、紗桜ってこんな性格だったっけ?
お嬢様で、いつも落ち着いてるひとだったよね……?
あたしから離れた紗桜は、コホンとひとつ咳ばらいをした。
「取り乱してゴメンなさいね。 そう。 私は確かに地球から来たわ。 けれど、その前まではここオスガリアにいた。 私はオスガリアの天使だった」
「っ!?」
衝撃の真実だった。
「ちょ、ちょっと待って!」
「なぁに? まお」
一旦ストップをかける。
頭がこんがらがっちゃいそう。
「確か天使がいなくなったのって、結構前だったはずなんだけど……」
カカオの顔を見れば。
「たしか百年ほど前か?」
と、悩んでいる。
「もし、紗桜がその天使だっていうのなら、紗桜ってすっごいおばあちゃ……」
「おばあちゃんじゃないわよっ!」
「いでっ!」
紗桜からの鋭いチョップが飛んだ。
ったぁい!
久々だと効くなぁ。
「私はオスガリアから追放された後、一度は死んだのよ。 そしてもうこの世界に関わるのはイヤで、自らの魂を地球へと向かわせたの。 そのとき、このピアスに天使の力と天使のときの記憶をしばらく封じたわ。 そして、別の人間として生まれ変わった」
そういって紗桜が取り出したのは、さっき姫が持っていたのとは違う天使がモチーフにされた、ピアスだった。
さっきの天使は泣いていたけど……こっちは笑ってる?
「地球での日々を過ごすうちに、じょじょに天使の記憶を取り戻し始めて……そして、なんとなくだけど麻央の魔女としての力にも気づいたのよね」
「えっ!」
それは初耳だ。
「だって私、〈千の目の天使〉って言われてて、人の心や力を見抜くのは得意だったから」
パチン、と紗桜は悩殺ウインクを放った。
残っていた数人の衛兵たちが鼻血を出し、バタバタと倒れる。
紗桜が可愛いのはわかるけど、なんかヤダ。