あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。




「サーチェルに残していったピアスは、もし私が記憶を取り戻した時の為にこの世界に戻るときに使う手段として残して置いたのだけれど、やっぱり悪用されちゃったわね。 一応王族すらもおいそれと入ることのできない場所に保管して置いたのだけれど。

それで、麻央がいなくなったころから天使だった頃の記憶に気づき始めて……それで麻央を守るためにわざと召喚されたの!」


 ビシッと紗桜が姫の鼻先に指を突きつけた。


「て、天使さま……それでは、わたくしの願いは……?」

「叶えられないわよ。 だって私、麻央傷つけたくないし。 それに、私を追放し、勝手に召喚したものの言うことなど、なぜ聞かなければならないの? 都合が良すぎるわよ。 そんな野望、叶えられるわけないわ。

けどね、そう……オスガリアの環境を取り戻すことくらいはしてあげましょうか」

「え? でも……」


 姫が、なにかいいたげに紗桜に詰め寄る。

 
 けれど、紗桜はそれを笑顔で制した。


「あなたたちの最初の願いは、“オスガリアの環境を取り戻すこと”でしょう? 最初の願いを叶えましょう」


 紗桜は、天使の微笑みを姫に向けた。


 願いが叶わないことを悟った姫は、へなへなと床に座り込んでしまう。


そうか。


姫たちは、国民にウェズリアを侵略するのはオスガリアの環境が悪くなり住むことができなくなったからだと言っていた。


そして今、紗桜がオスガリアの環境を改善した。


つまり、もうウェズリアを侵略する理由がなくなった。


 よかった……。

 
 これで、無事、終われるんだね。




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