あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
03 あたしが魔女!?
図書館を後にしたあたしたちは、さらに城の奥に入っていく。
というか、よく考えたらあたし、こんなところにいていいのかな。
だってあたしは、地球からきた得体の知れない普通の女子高生だし。
ただ魔力を持っているだけなら、ウェズリアの住人だって魔力を持っている。
運良く王子に見つけてもらったはいいけど……。
なのに、あたしはなぜお城で王子の隣にいるんでしょうか。
でも、今はそんなこと考えてても仕方ないし……。
バイブルの中身を思い出せ。
今のあたしがすべきことは……。
確か、ヒロインが王子様に救われて、お城に連れてかれたら、王様に謁見してたような……。
謁見?
「あのぅ」
王子に声をかけると、何だ、と少し冷たい声だけが帰ってくる。
「もしかして、王座の間とかに向かってますか? あたし、王様に謁見したりとか……」
勝手に来といてあたしがこんなことを言うのはおかしいと思うけれど、謁見するならするで心の準備くらいさせてほしい。
しかし、王子は更に眉を顰めただけだった。
んん?
どゆこと?
そして一言。
「これから向かうのは王座の間ではない」
とだけ言って、再び前を向いた。
何とも言えない冷ややかな空気に、あたしは押し黙るしかない。
結構奥の方まで来たかと思うと、王子はしゃがみ込み、トントンと床を指先で叩く。
すると……ブワリと埃(ほこり)が舞い上がり、視界が霞んだ。
「ケホッ……」
埃を吸い込んでしまったあたしはむせてしまい、涙が出てくる。
そして、涙を手の甲で拭うと……。
目の前には、なかったはずの地下へと続く階段ができていた。
これも、魔法?
身を乗り出して覗き込んでみるけど、階段は割と長いようで闇が深い。
先が見えない。
王子はスタスタと階段を降りていくので、あたしも仕方なくついていくことにした。