あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
「おっはよ~!」
「今日も朝から元気ね、麻央」
友達に挨拶していると、自分の席で本を読んでいた黒髪猫目の美少女が、あたしがやってきたことに気づき、こちらにやってきた。
あたしの肩くらいまでしかない、天然パーマの黒髪とは違い、サラサラロングヘアなのでうらやましく思ってしまう。
「紗桜(さくら)! うふふ~!」
「なによ、そのニヤニヤ……」
「昨日、『異世界トリップ ~王子様との禁断の恋~』っていう小説が発売されたの~!!」
「ああ、麻央が好きなトリップものね……。というか、読みながら歩いて来たの? 危ないじゃない」
「ごめんなさーい、でもでもっ! 大好きな作家さんの新作だから、発売日張り切って一時間前から並んじゃった!」
「……よかったわね」
紗桜はあたしを見て呆れたような顔をした。
そして、前へと垂れてきた黒髪をばさりと後ろへ流した。
その仕草がもう、なんとも色っぽい。
右耳につけている銀のピアスも、美しい女性を象ったもので、彼女の美貌を引き立てるのには十分すぎる。
西園寺 紗桜 ─さいおんじ さくら─は、あたしの大親友。
苗字でなんとなく想像がつくだろうけど、正真正銘の名家のお嬢様だ。
成績優秀、スポーツは基本はスラリとこなす。
しかもモデルのようにスラリとした肢体。
雪のように白い肌は、まるで異次元のように神々しすぎて、紗桜は本当は二次元の住人ではないかという錯覚に陥る。
紗桜はコスプレとか似合うんじゃないかと思っている。
一回推しキャラやってもらおうかな?
白い肌で金髪碧眼のドレスを着たお姫様。
あ、耳の尖った弓を持ったエルフもいいかもしれない!
一人でそんな計画をこっそり立ててはいるけど、紗桜に打ち明けたら、どうなるんだろう。
紗桜は実は小悪魔というか……あたしに対して、優しいけど、ちょっぴりイジワルなのだ。