あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
「だから、まおが喚ばれたんだ」
「あたし?」
王子は真剣な顔つきで頷いた。
すると、ようやく出番がきたからか、王子の後ろでモルガさんが嬉しそうな顔で頷くのがわかった。
「まおさんは、魔力を持っています。 そして、地球から連れて来られました」
「はい」
「地球から、サーチェルに来るとき、何か見ませんでしたか?」
何か……?
んーと……。
目を閉じ、記憶をたどる。
ああ、確か……。
「紫色の、魔方陣が足もとに現れました」
「それです!ペンタグラムと月と獣の紋章だったでしょう?」
月と獣……?
それってまさか!
「さっき、図書館で見た……!」
あたしが言うと、たちまちモルガさんは少年のような笑顔を浮かべた。
「そう! それはこの国ウェズリアの紋章です。まおさんは、我々が行(おこな)った魔術によって、ここへ召喚されたのです」
「……召喚?」
意味がわからなくて、頭を傾げる。
我々が行った魔術によって、ここへ召喚された?
つまり、あたしは魔力があったからっていう理由だけじゃなくて、この人たちに意図的にここへ連れて来られたってこと?
なんの為に……。
というか!
「呼んだのがここなら、きちんとこの国に呼んでよ……」
なんで隣の国に飛ばされてるわけ⁉︎
「申し訳ございません! 何らかの手違いで……けれども、王子にお迎えをお願いしたことは正解でした。 ……でしょう?」
モルガさんがこれでもかというほど、目を見開き、あたしに必死にアピールをしてくる。
た、確かに知らないおじさんとかが来られたらあたしはきっとこの国には来なかっただろう。
その点では感謝すべきかもしれない。
「──そうですね、ありがとうございます」
律儀に頭を下げた。
「そして、なぜあたしが呼ばれたのか、本当の理由を教えてくださいませんか?」
「え?」
「わざわざ召喚してまで、あたしに何か用があったのでしょう?」
これを聞かなきゃモヤモヤしてきっと気が晴れない。
上体を起こして、モルガさんを見つめると、彼は興奮気味にこう言った。
「まおさんは、魔女なのです!」
「……そうですね」
魔力、持ってますし。
女の子ですし。
すると、モルガさんは違うといいたげに頭を激しく左右に振る。