あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
06 地獄の魔力訓練
「うわっ」
〈ひっろ……〉
あたしとシュガー、二人して口をポカーンと開けて、立ち尽くす。
朝食を済ませたあたしは、クコに連れられ、城の中庭のような場所に通された。
中庭は想像よりも遥かに広く、左手奥には自然豊かな花園が広がっている。
その前には芝生が敷かれ、中庭の中央近くには白の大理石で作られた大きな円盤型の噴水があり、水を勢いよく吹き上げていた。
そして、あたしが連れてこられた場所は石床の広い空間。
植物も植えられておらず、この先の通路を進めばどうやら魔術師たちが訓練する塔へと行けるようだった。
たぶん、ここで魔術を訓練する者もいるだろう。
このあたしのように。
けれど、中庭には滅多に一般人は入れないと、クコに聞いた。
たとえそれが軍隊に所属する魔術師でもだ。
ここは王族の私生活をおくる場所にギリギリ含まれるらしい。
そんなところにあたしが入ってもいいのかと抗議したものの、魔女は王族の次か同等くらいに位が高いから大丈夫だと、カカオに諭されてしまった。
ようやく目的の場所にたどり着くとそこには、見覚えのある人影が二つ、あった。
「──カカオ!」
「来たか」
そこには、普段の少し装飾が多い軍服とは違い、シンプルな見た目で動きやすそうな軍服を着たカカオがいた。
その一歩後ろには、一人のメイドさんが控えている。
あれ……確か……。
あの人はメイド長の……リカエルさんだっけ?
彼女はメイド服のまま、カカオの後ろに控えていた。
とても綺麗な銀に近い髪。
その整った顔立ちは、どこか中性的なものを匂わせる。
綺麗な人だなぁ。
カカオが、今日やることを簡単に説明してくれる。
「クコに聞いているかもしれないが、今日は魔力の訓練だ。 まおは戦うために喚ばれたから、早く戦うことができるようになってもらわないと困る」
「わかった」
「本来ならまおが所属している護衛隊の隊長達に指導をお願いするところだが、まだまおは魔力の使い方すらわからないからな。だから、魔術の基礎を叩き込んでもらうためにメイド長にお願いすることにした」
え?
「本日指導させていただきます、リカエルと申します」
「り、リカエルさん、戦えるの?」
ただの綺麗なメイドさんにしか、見えないのに……。
「メイド長の魔力は魔術師の中でも、上位の方です。 この城の中では、軍隊長に次いで2位、3位を争うほどの実力を持っているんですよ」
クコが、そう耳打ちしてくれた。
あ、女の人の方が魔力は強いんだったね。
「じゃあ、クコは?」
あたしがクコに話を振ると、クコは顔を少し赤くして、顔の前で手を左右に振った。