あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
*
「私は車で帰るけど、麻央も乗っていく? 家まで送るわよ」
わずかに空が赤く染まり、キレイなグラデーションが広がっている。
紗桜は、執事が迎えに来たようで、彼女の後ろには、黒塗りの高級車が控えている。
……お嬢様。
普段一緒に過ごしてて、気取ったところも特にないからついつい忘れちゃうんだけど……。
お、恐れ多い!
「あ、あたしは今日はいいや」
あたしは頭をブンブンと振り、誘いを断った。
たまぁーに乗せてもらったりするけど、今日は小説を一人でゆっくり読みながら、その世界に浸りたい。
だから、誘いを断った。
どうやら事情を察してくれたらしく、紗桜は優しく微笑むと、
「わかったわ、さよなら、麻央。 また歩きながら読んじゃダメよ」
「はーい……」
紗桜は去り際にしっかりとあたしを注意すると、執事に扉を開けてもらって高級車に乗り込み、去っていった。