あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
「わっ、私などとんでもない! 第一、私は攻撃系の魔力は使えないので……」
「なら、何が得意なの?」
「私は治癒系統の魔法の方が得意です。 私の一族は、そういう家系なんです」
「家系ごとに使える魔法が違うの?」
「はい。 私は妖精族に当たります」
「妖精! クコにぴったり!」
「ここウェズリアには、大きく分けて人族、エルフ族、妖精族、そしてヴァンパイアがいます。 ウェズリアの人口のほとんどは人族とエルフ族で、妖精族とヴァンパイアは少数派になりますね。 あと他にも民族などで分かれる場合がありますが、大きく分類すればこの程度でしょうか」
「エルフ! エルフもいるのね⁉︎」
食い気味にクコに迫ると、クコは驚いたような表情で頷く。
「はい。エルフ族は人族よりも保有する魔力が高いと言われています。 軍に所属する魔術師たちも、エルフ族が多いです。 それに、メイド長もエルフですよ」
クコがそういうなり、リカエルさんが、あたしの前に出てきて上品に頭を下げた。
「そういうことなので、よろしくお願いします、まお様」
リカエルさんが、エルフ……!
た、たしかに言葉に形容できない美しさ……!
さらりとゆれる白銀の髪の間から、チラリと尖った耳朶が見えた。
たしかにエルフだ!
「よろしくお願いします……!」
あたしも頭を下げた。
「それでは、始めましょうか」
リカエルさんは口角を上げ、柔らかく上品に微笑んだ。
優しそうな雰囲気に、強張っていた心もほぐれた。
軍隊長とかだったら、どれだけ厳しいのかと思ったけど、よかった!
リカエルさんで!!
これならすごく練習はかどりそう!
そう思ったことが、間違いだった。
これから、想像以上の地獄が始まってしまうというのに。