あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
あの上品さに騙されたけど、リカエルさんは悪魔だった!
鬼だ、鬼!!
「……またいらぬことを考えているようですね」
無表情で言うリカエルさんは、さらに怖いぃぃい!!
さっきの美しい笑みは一体なんだったの⁉︎
本当に同一人物⁉︎
「……あの! メイド長……! さすがに厳しすぎるのでは……一旦休みにしましょう!」
泣きそうな顔をしていたクコが、助け舟を出してくれる。
あぁ~!
神様、仏様、クコ様!!
お願いします、ちょっとでいいから休ませて~!
藁にも縋る思いで、リカエルさんを見上げれば、さすがに彼女も納得してくれたのか、ゆっくりと頷いてくれた。
た、助かった……!
「それでは私は、お茶を入れてきましょう。 クコ、あなたも来て下さい」
「は、はい! メイド長」
リカエルさんはクコを引き連れ、城の奥へと引っ込んだ。
「や、やっと休憩だ……」
あたしはダルい身体を、キレイに生えそろった芝生の上に投げ出す。
すると、突然目の前が暗く陰った。
「弱い奴だな、それでも本当に魔女なのか?」
「……カカオ……」
いつの間にかシュガーと訓練をしていたらしいカカオが、あたしを覗き込むようにして、身体を折り曲げていた。
ちょっとムカつく。
イヤミ?
「しょうがないじゃない。 だって最近まで、普通の平凡な女子高生だったんだし」
仕返しを試みて、わざと『普通の平凡な女子高生』というところを強調する。
「第一、カカオはあたしが魔力持ってても使えないって気づいてなかったの? あたしが魔力持ってるって聞かされた時、どれだけ驚いてたか、知ってるでしょう?」
そう訴えれば、カカオは一瞬目を瞬かせた。
「それでも、まおは魔女だから、出来ると思ったんだ」
「なに、それ……」
魔女だからって……。
どれだけ魔女の力を信じてるのよ……。
たしかに歴代の魔女たちは強かったでしょうね。
けどね、あたしはつい最近まで自分が魔力持ってることすら知らなかったんだよ。
この国の小さな子供すら魔力を持って生まれてくる。
小さなときから魔法にふれ、魔法があることが日常。
小さなときからの積み重ねが塵も積もれば山となって今魔力を扱えているというのに。
あたしはそれを短期間で覚えてさらに難易度の高い魔法を覚えなければならないのだ。
いきなり使いこなせたら誰だって苦労しないわー!
というか、魔力の練習って、もっとハデなやつかと思ってたけど……こんな精神統一だなんて思わなかった。