憎たらしいほど君が好き
「着いた」


下を向いたまま歩いていたから分からなかったのか、私の家の前だった。


「廃人みたいに何も言わないから気持ち悪いことこの上なかったよ」


溜め息をついて門柱に身体を預ける夕陽。


「ごめっ…、夕陽っ…夕陽…」


止めどなく流れる涙は、目の前の何もかもを見えなくした。



夕陽がどんな顔をしているかなんて分からなかった。

「…みーみー泣かないでよ、めんどくさい」


ごしごしと袖で顔を拭かれる。


「痛い痛い痛い痛い!」

「早く入れば?家」


うん、と頷くと夕陽は振り返りもせずに帰って行った。
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