憎たらしいほど君が好き
****************

真人と付き合って早二週間。

今日は土曜日だ。

涼しい気候がちょうど良い。

これ以上にない幸せのひととき。

誰かに好かれたいという、狂おしいほどの思いもなく甘い雰囲気に浸ることがこんなにも幸せで。

日が経つごとに心の中に甘い薔薇色の泉が湧いてくるような、そんな気がする。


「もしもし真人?」

小さな振動を感じて携帯を見ると真人からだった。

『よー霞ー俺俺ー』

間延びした声が胸をくすぐる。

「もーオレオレ詐欺みたいだって言ったじゃん」

『ははっ、前にもこんな会話したよな』

「そうだね」


極めて無頓着、もしかしたら冷たいとも思えるかもしれない口調だが、それとは裏腹に口元がほころんでしまっている。

その頃には辛いばかりだったのに、今では関係が変わっている。

そのことが嬉しくてどんな言葉も全てが愛しい。


『やっぱさぁ霞って良いよなぁ』

こんな言葉、前なら聞けなかった。

同じような言葉でも甘さが違う。

チョコレートみたいに心で溶けて、私の中を甘い甘いもので満たすのだ。


「何で良いの?」

『だってさーサバサバしてるし飽きないし、何より良いやつじゃん?』

「同意求められても分かんないわ。一応ありがと」


ニヤつく口元を抑えられない。

これからバイトなのに大丈夫かな。

そんなことを考えられる余裕が嬉しい。
< 30 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop