憎たらしいほど君が好き
バタバタと家を出てバイト先へ向かうと、マリカさんが忙しく立ち働いていた。

「遅れてすみませんっ」

「いいから!説教は後回しよ、カオルは早く準備してっ」


いつもは静かで穴場的雰囲気の店なのに、何で今日はこんなに人が多いんだろう?

怪訝な顔のまま、あたふたと更衣室に向かった。


ドアを開けると、



「じゃーん、驚いたー?」

「ずいぶん遅ぇな」

「早く着替えなよ、グズ」

理彩と真人と夕陽の姿があった。


「理彩…何で…」

「ノンノン!ここではリオナだよー」

「俺はマサキー!」


四人で一緒にバイトするのか。

夕陽はいっこうに口を開かない。

乗り気じゃなかったのかな、この様子だと。


「夕陽は?」

「…アサヒだよ」


不機嫌そのものな返答に乾いた笑いが零れた。

何だか嬉しい気持ちにはなれなかった。

真人が来てくれたのなら喜べるはずなのに、自分の居場所が無くなってしまうような気がした。


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