憎たらしいほど君が好き
「じゃ、真人。今からステージだから」


苦しくなってまた嘘をついた。

あまりにも真人の声が切なくて。

勝手だなぁ、私。


『分かった』


プツリと電話が切れてからマリカさんに会釈する。


「なぁにカオル?辛気くさい顔しちゃって。上がって良いわよなんて言わないよー、あたしは」


「別にサボりたい訳じゃありません」


苦笑しながら携帯をバッグにしまい、すっかり氷が溶けてしまったミルクティーを飲み干した。



「ま、辛い恋してるみたいだからね。メニューで何か好きなの頼みな」


やっぱりマリカさんは優しい。


「ありがとうございます」

艶やかに笑うマリカさん。

やっぱり、マリカさんには勝てそうにもない。
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