ある男の子と女の子の秘密のお話
次の朝は、モヤモヤも消えていた


哲郎の学校謹慎は

私だけ、知っている

秘密でもないことが
わかった……





「いやぁ、イケメンは
やることが違うわぁ…!!」





なんて、つぶやきながら
制服に着替えた



私の学校は
色んな学科の集まりで

校則はあまり厳しくなかったから




自分の長い髪に…

今日は、ドライヤーで少し
軽くウエーブを作った

なんだか…
心も軽くなる ♫



授業中に結ぶための髪ゴムを
腕にひっかけて

いつものように駅に向かった。


ホームで
電車が来るのを待ってたら





「ヒカちゃん!おっはよっ!」




サトル君の声がした・・・

振り向いて、私も朝の挨拶




「おはよっ!
今日は少しあったかいね!」




本当は、昨日の哲郎のことが
言いたかったけど

お天気の話しなんてしている私。


サトル君も、ちょっとだけ
周囲を見回して
小声で言った…





「昨日…行った?
ちゃんとプリントしてた?w」





「へっ?哲郎?
なんか、床に転げて笑ってたよ!
シャーペンをクルクル回してた!」





「あはは!マジ!?
あいつ、暇してたんだ!!」





「哲郎は頭いいから
プリントは終わるでしょ?」





「それは、楽勝だよ…
哲郎だったらね。
謹慎処分になっても
平気そうだっただろ?
あいつはもう、
進路も決まってるしね!」





サトル君は、何のためらいもなく
哲郎の進路の話をした


今は、まだ高校2年の冬…


そう考えれば
この時期に謹慎処分なんて
命取りのようなものなのに

哲郎からは
何の危機感も感じなかった






「この時期に、もう!?
進路が決まってるの?!」





「ちょっと!w
ヒカちゃん、声!!
もうちょっと小さく!w」




なんとなーくだけど
サトル君と、哲郎が仲良しなのが
よくわかった。



喋り方までそっくりな
サトル君と哲郎。






「本当はさ!
タバコを持っていたのは
俺と哲郎の2人なのよ。
でも、俺は進学だからさ
哲郎が、全部1人でかぶった感じ?」





「そうなの?」





「哲郎はほら…
孤独を好む男だから。
全部、俺のタバコです!!
とかさ、また
かっこいいこと言いやがってw
1人で謹慎部屋だよ!」





なんとなく
話の流れが、見えてきた

哲郎が、昨日言っていた……


《あんまり騒がれるのは
好きじゃない。》


の言葉は
どうやら本当のようだ…



私が今まで見ていた
哲郎のイメージとは
ずいぶんと、違ってる。



人気者の哲郎…孤独を好む男…?

なかなか難しい。





「昨日、哲郎から電話あったよ…
ヒカちゃんが謹慎室に来て
ビックリしたって!
笑ってたよ!w」





「ビックリしたのは
私の方だよ!
みんな心配してたから
行ったんだけど
なんか、違ったね…
辛い、謹慎!って
感じじゃなかった!」





「哲郎はさ…
家が日本料理のお店なんだよ
後を継がないといけないのね!
だから進学はしないの
謹慎でも、問題ないんだって
本人は、言ってたね…
ヒカちゃん知ってた?」





そんな事、知るわけない!

私と哲郎は喋ったこともない
挨拶すら
まともにしていない関係






「そんな事は
知らなかったよ…
哲郎も、
何も言わなかったし 」





「そか!
ヒカちゃんには
これから
話すつもりなのかもしれないね
哲郎…」





とても、そうとは
思えないけどw


哲郎の周りには
いつも人がたくさんいて

ゆっくり、話す時間もないし
声をかけるタイミングすら
見つけられない・・・


私の中では哲郎と話すのは

昨日の謹慎部屋が
最初で、最後の気がしていた。


「ヒカちゃんもう、
謹慎室には
行ったらいけないけどさ…。
もし…今日、行っていたら
哲郎は、昨日より
喜んだんじゃない?w」






「えっ?なんで?今日なの?
昨日はマズかったのかな?」





「今日のヒカちゃんの髪型!w
いつもと違うよね!
フワフワしてるよ!」





サトル君は
私の顔を覗き込んだ





「あぁ!
ドライヤーで少しね…
ブローしただけだよw」




自分でも、忘れてしまってた。



だんだんと、駅のホームに
友達が集まってきた

私と、サトル君は

二人だけのヒソヒソ話はやめにして
友達と、朝のお喋りをはじめた



電車がホームに着き
いつもの車両に乗り込む時に

サトル君は、私の顔を見て言った






「フワフワの髪型
見たかっただろうな
…あいつ!w」





そうれだけ言って…

サトル君は
友達の集団に入って行った。



(見たかった?あいつ?)




次々に乗ってくる
学生達に押されるようにして

私も、美穂ちゃんや
チーちゃんとの間に入って行き

いつもと同じように
ガールズトークの仲間入りしている

ふりをした…



頭の中は、昨日と同じように
クエッションマークで溢れていた

??



サトル君は、何で



私の髪型が
いつもとほんの少しだけ…
違う事に気がついたの?




その髪型を見たかった…
あいつ!って


哲郎のこと?


他の人には言いたくない
ナイショの話?孤独を好む男?


この、男の子の
特徴的な言葉足らずな話を
考えるのに必死だった

哲郎はあと4日で
謹慎処分が終わる





その時に、何か聞けるかも
しれない…



私の中の
クエッションマークの答えを
知っているのは

哲郎しかいないと思った。

< 4 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop