暗闇の恋
交差点であの子の姿を久しぶりに見た。
隣にはいつもの友達じゃなく男がいて幸せそうに会話をしている。
二人ともキャリーバックを持っている。
旅行に行くのか…だとしたら、恋人なのか…。
あの子に恋人が出来た…。
いやいや、僕にはまどかがいるだろう。
なのに僕は気になって仕方がない。
頭ではいけない事とわかってる。
わかってるけれど僕は二人の後を追ってしまった。
二人は時折笑い合いお互いの顔を見つめ合ったりしている。
僕はなんて勝手なんだろう。
その男に向けてる笑顔は僕のものにしたくなった。
後ろからじゃ二人の会話がわからない。
会話が気になる。
あの子は男に腕を組み全てを委ねてるように思えた。
安心せて信頼しきってる。そんな風見えた。
あの子は男の方を見て話すから少しだけど唇が読めた。
《旅行楽しみだね。》
彼女はそう言った。
やっぱり旅行に行くんだと思った。
《美ら海水族館絶対ね。》
美ら海…聞いた事がある。
急いで携帯で検索してみた。
所在地は[沖縄]と出た。
二人は沖縄に行くんだと思った。
駅について男は彼女を待たせトイレに行った。
僕は頭で考える余裕がなかった。
気付いたら体は動いていて僕の手は彼女の腕を掴んでいた。
「八雲さん…?」
彼女は僕だと気付いた。
手のひらに文字を書いた。
【行かないで。】
「何を言ってるんですか?!」
彼女の顔が怪訝な表情に変わる。
【君が好きなんだ。行って欲しくない。】
僕はまどかを忘れていた。
「無理…障がい者同士だから無理って言ったのは八雲さんじゃないですか!!今更…私は彼がいます。彼が大事なんです。だからこんな事されても迷惑です…離してください。」
【お願いだ…僕のそばに…】
「勝手な事言わないでください。彼戻って来ちゃう。もうどっかに行ってください。じゃないと大声出します。」
【僕は歩を他の…】
「歩??」
彼女の神経が僕の後ろに注がれた。
とたんに手を払いのけられる。
振り返ると僕より少し身長が高くきっちりした身なりでしっかりとした印象を持った男が立っていた。
「歩…どうした?大丈夫?」
男は彼女に話しかけた。
「道がわからないみたいで話しかけられたんだけど…」
彼女は咄嗟に嘘をついた。
「そっか…何処に行かれるんですか?」
とても新鮮な人だった。
僕が彼女の手のひらに文字を書いてたのを見ていたのだろう。
話し方はゆっくりと僕が唇を見やすいようにしっかりと話してくれた。
『大丈夫。ありがとう』
わかりっこないと思って手話で話し、その場から離れた。
振り返ると男は彼女に向かって
「大丈夫。ありがとうだって言ってたよ。」
と、言った。
アイツは手話がわかるんだと思った。
僕は人ごみに紛れながら改札を抜け見えなくなっていく二人を見ていた。
言ってしまった。
彼女に想いを伝えてしまった。
自分でも勝手で、なんでこんな事したのかがわからない。
僕にはまどかがいる。
彼女は結婚をいいなと思った。
本気で心からそう思ったんだ。
なのに、僕はなにがしたかったんだ?
ただ男と歩くあの子が自分から離れたことが嫌だった。
馬鹿だよな…自分で突き放したのに…。
こんな事になるなら幾度となくあったチャンスを掴めばよかったんだ。
この気持ちは奥、底にしまいこまないといけない。
僕にはまどかがいる。
今更まどかを裏切るなんて出来るわけがない…。
僕は消えて行った改札をもう一度見た。
もうあの子の姿は何処にもない。
あの子はもう僕を忘れ違う男と恋をしてる。
それを壊すことは出来ない。
僕は踵を返し、すっかり遅刻になってしまったバイト先に向かった。
隣にはいつもの友達じゃなく男がいて幸せそうに会話をしている。
二人ともキャリーバックを持っている。
旅行に行くのか…だとしたら、恋人なのか…。
あの子に恋人が出来た…。
いやいや、僕にはまどかがいるだろう。
なのに僕は気になって仕方がない。
頭ではいけない事とわかってる。
わかってるけれど僕は二人の後を追ってしまった。
二人は時折笑い合いお互いの顔を見つめ合ったりしている。
僕はなんて勝手なんだろう。
その男に向けてる笑顔は僕のものにしたくなった。
後ろからじゃ二人の会話がわからない。
会話が気になる。
あの子は男に腕を組み全てを委ねてるように思えた。
安心せて信頼しきってる。そんな風見えた。
あの子は男の方を見て話すから少しだけど唇が読めた。
《旅行楽しみだね。》
彼女はそう言った。
やっぱり旅行に行くんだと思った。
《美ら海水族館絶対ね。》
美ら海…聞いた事がある。
急いで携帯で検索してみた。
所在地は[沖縄]と出た。
二人は沖縄に行くんだと思った。
駅について男は彼女を待たせトイレに行った。
僕は頭で考える余裕がなかった。
気付いたら体は動いていて僕の手は彼女の腕を掴んでいた。
「八雲さん…?」
彼女は僕だと気付いた。
手のひらに文字を書いた。
【行かないで。】
「何を言ってるんですか?!」
彼女の顔が怪訝な表情に変わる。
【君が好きなんだ。行って欲しくない。】
僕はまどかを忘れていた。
「無理…障がい者同士だから無理って言ったのは八雲さんじゃないですか!!今更…私は彼がいます。彼が大事なんです。だからこんな事されても迷惑です…離してください。」
【お願いだ…僕のそばに…】
「勝手な事言わないでください。彼戻って来ちゃう。もうどっかに行ってください。じゃないと大声出します。」
【僕は歩を他の…】
「歩??」
彼女の神経が僕の後ろに注がれた。
とたんに手を払いのけられる。
振り返ると僕より少し身長が高くきっちりした身なりでしっかりとした印象を持った男が立っていた。
「歩…どうした?大丈夫?」
男は彼女に話しかけた。
「道がわからないみたいで話しかけられたんだけど…」
彼女は咄嗟に嘘をついた。
「そっか…何処に行かれるんですか?」
とても新鮮な人だった。
僕が彼女の手のひらに文字を書いてたのを見ていたのだろう。
話し方はゆっくりと僕が唇を見やすいようにしっかりと話してくれた。
『大丈夫。ありがとう』
わかりっこないと思って手話で話し、その場から離れた。
振り返ると男は彼女に向かって
「大丈夫。ありがとうだって言ってたよ。」
と、言った。
アイツは手話がわかるんだと思った。
僕は人ごみに紛れながら改札を抜け見えなくなっていく二人を見ていた。
言ってしまった。
彼女に想いを伝えてしまった。
自分でも勝手で、なんでこんな事したのかがわからない。
僕にはまどかがいる。
彼女は結婚をいいなと思った。
本気で心からそう思ったんだ。
なのに、僕はなにがしたかったんだ?
ただ男と歩くあの子が自分から離れたことが嫌だった。
馬鹿だよな…自分で突き放したのに…。
こんな事になるなら幾度となくあったチャンスを掴めばよかったんだ。
この気持ちは奥、底にしまいこまないといけない。
僕にはまどかがいる。
今更まどかを裏切るなんて出来るわけがない…。
僕は消えて行った改札をもう一度見た。
もうあの子の姿は何処にもない。
あの子はもう僕を忘れ違う男と恋をしてる。
それを壊すことは出来ない。
僕は踵を返し、すっかり遅刻になってしまったバイト先に向かった。