暗闇の恋
明日で虎ちゃんとの旅行が終わる。
この3日間何もなかった。
避けてるみたいに夜になると、決まって虎ちゃんは「さっそろそろ寝ようか。」と言って寝てしまう。
私からなんて、そんな事出来るわけもなく、ただ黙って寝るしかなかった。
虎ちゃんの考えがわからなくて不安になる。
私に魅力がない事はないと、あの日言ってくれた。
大事にしていきたいと…。
でもこれって大事にしすぎなんじゃない?!
女の子にだって性欲はあるんだぞ!
好きな人と愛を確かめたいって思うんだもん。
ベッドの中で背中越しに感じる虎ちゃんの体温が凄く愛おしくて今すぐ虎ちゃんの腕の中で愛してほしいと思ってしまう。
私が寝てしまうまで、虎ちゃんが起きてる気配を感じてる。
起きてるのになんで何もしないのか…まさかこの旅行で私なんかしちゃった!?
八雲さんの事言ったからかなと、ずっと考えてしまう。
やっぱり隠し通すべきだったのかもしれない。
もうっ私のバカ!!嘘も方便っていうじゃん!!
はぁ恋愛ってつくづく難しい。
明日夕方の便で帰る。
今日をいれても2日しかない。
夜は今日が最後になる。
私は虎ちゃんと愛し合う為、虎ちゃんの腕の中で大人になる為、沖縄に来たんだ!
単純に観光で遊びに来たわけじゃない!
今日虎ちゃんが何もしてこなかったら…私から…。
朝ごはんを食べながら今夜の事を決意した。
「歩?どうした、そんな険しい顔して…不味いのか?」
周りに聞こえないように声を潜め話かけられビックリしてしまう。
「ううん。なんでもないし、美味しいよ…。それより、今日の予定は何?」
「今日はなにも考えてないんだ。明日はチェックアウトしてお土産買うのに国際通り行ってから空港へ向かう予定だけど、今日ホテルでゆっくりしてもいいかなって。海行ってもいいし、プール行ってもいいかなって…」
ホテルでゆっくりしてもいいかなって…言われて少しドキドキした。
「じゃプール行きたい。」
「じゃそうしよう!」
朝ごはんを食べ終えて部屋に戻ってから少しゆっくりして、10時ぐらいからプールに行った。
2時ぐらいまで遊んで軽い昼食を取って部屋でゆっくりし、いつの間にか私は寝てしまっていた。
「歩、起きて…。」
虎ちゃんに揺り起こされ目を覚ます。
時間を確認すると6時半に針があった。
「ごめん…寝ちゃってた…」
「いいよ、俺も寝てたし。それより、出掛ける用意して。」
「出掛けるの?」
「うん、晩御飯食べに行こう。」
そう言って虎ちゃんは動き出した。
それにつられるように私も急いで用意し始めた。
ホテルを出て車で連れて来られたのは潮の香りがする海沿いのレストランだった。
案内されて座った席は波の音が聞こえるテラス席で見えない私にも、この店がきっとオシャレなんだと思わせる雰囲気が漂っていた。
「ここコースだから…とりあえず飲み物なんだけど…歩はなにがいい?」
「う〜ん…」
「じゃシャンパンにする?」
「えっお酒ってこと?」
「うん、ノンアルコールのシャンパンあるんだ。」
「じゃそれにする。」
運ばれてきたシャンパングラスは少し大人にしてくれた。
それだけでドキドキする。
この場所が特別な事は私でもわかる。
初めてのシャンパンはシュワシュワしてて炭酸みたいだった。
料理の全てが初めて食べる味で、波の音を聴きながらの食事は大人になった気分だった。
最後にデザートが運ばれてきて、もうすぐ終わるんだと思うと少し寂しくなった。
デザートがきてから虎ちゃんは無口になった。
何故か緊張してる空気がある。
「歩…話があるんだ…」
デザートが終わる頃虎ちゃんが口を開いた。
凄く重たい口調…あぁそっか、やっぱり私の事嫌いになったのかもしれない。
虎ちゃんは席を立つと私のそばに来た。
私の手を取って自分に向けるとしゃがみこんだ。
「歩…聞いて欲しい事があるんだ。」
「なに…?」
「これ…」
そう言って虎ちゃんは私の手に小さな箱を置いた。
開けて触ってみると丸い円のような輪のような物だとわかった。
「これって…指輪?」
「井伊垣歩さん。」
突然名前を言われて気付いた。
「はいっ!」
とたんに虎ちゃんの緊張が伝染する。
「俺にとって愛する女性は歩…君がいればいい。この先俺と二人で一緒に歩いていってくれないか?」
少しの間が空いて虎ちゃんは話し続けた。
「井伊垣歩さん…俺と結婚してください。」
繋がれた手から虎ちゃんの緊張が伝わってくる。
胸が熱くなる。
虎ちゃんは今日のこの日の為にこの旅行を考えてくれたんだと思うと、たまらなく胸が熱くなる。
「歩…?」
声が詰まって出てこない。
ただ首を縦に振るしかできなくて、涙が溢れてくる。
「OKってこと?」
深く深呼吸して答える。
ちゃんと言葉にして言いたかった。
「こんな私でいいの?」
「今のままの歩がいいんだ。」
「…よろしくお願いします。」
私の言葉わ聞くと虎ちゃんは静かに私を抱きしめた。
「ありがとう。」
耳元で虎ちゃんの優しい声が響いた。
虎ちゃん抱きしめられながら手のひらが疼いた。
頭の隅で八雲さんの手の温もりを思い出した。
なんでこんな時に思い出すのか…私は自分の考えてることが少しわからなくなった。
幸せの中にいるのに、八雲さんを思い出すなんて最低だ。
私は虎ちゃんを抱きしめた。
ホテルに着いてシャワーを浴びた。
今日きっとこの後虎ちゃんと…。
髪を乾かしてベッドルームに入る。
「じゃ俺も入ろうかな…」
私が上がったのを見て入れ替わるように虎ちゃんがシャワー室へと入って行った。
シャワーの水の音がしてきたのを確認すると急いでこの日の為に買った下着をつけた。
初めて買った香水も付けた。
準備は出来た。
心の準備も出来た。
忘れたことはないか考えてるとシャワー室が開く音がした。
急いでベッドに入った。
カチッと電気が消える音がした。
ベッドが軋んで音を立てる。
虎ちゃんが後ろにいる。
心臓が飛び出しそう。
「歩…こっち向いて。」
肩に手を置かれ軽く引かれた。
緊張で体が固まってしまう。
「歩…緊張しすぎ…」
ふっと虎ちゃんが笑う。
「だって…。」
「うん、わかる…俺も緊張してるから…ほら。」
虎ちゃんは私の手を自分の胸に当てた。
心臓が凄く早く脈を打っていた。
男らしいがっちりした胸にさらにドキドキする。
虎ちゃんはシャツを着てなかった。
肌を直接感じた手のひらが熱くなる。
「私と一緒…」
「うん。一緒…」
虎ちゃんはゆっくり私の頬にキスをした。
虎ちゃんは着ていた私のバスローブの紐を解いた。
下着姿にせれて虎ちゃんの反応が気になる。
「歩…もしかして新しい下着買った?」
「うん…」
「俺の為に?」
「うん…。」
沈黙が流れた。
なに?変なのかな?
「凄い嬉しい…脱がすの勿体無い…写真撮りたいって言ったら変態だよな。」
虎ちゃんは笑って言った。
でも、脱がす…って言われて私の頭の中はいっぱいだった。
脱がされちゃうんだ…わかってはいるけど改めて言葉で聞くとドキドキする。
「歩…凄く綺麗…」
さっき冗談を言って笑ってた虎ちゃんがいない。
真剣な声。
低くて優しい声。
その声にこれからも呼ばれるんだ。
虎ちゃんが絡めるように私の手を握った。
手のひらがまた疼いた。
虎ちゃんが私の胸に触れた。
「待って!!」
自分でも驚いた。
なんでそんなこと言ったのか。
なんで虎ちゃんを拒んだのか…。
「怖い?」
虎ちゃんが優しく聞いてくれた。
「うん…。」
怖くなんてなかった。
こうなる為にこの旅行も決めて準備もして来たのに今更、恐怖なんて生まれるわけない。
なのになんで…??
「じゃ今日はやめよう…焦ることじゃないし俺はそれだけが目的でもないし。」
そう言って私の頭をくしゃっとした。
「なんて顔してんだよ…俺は気にしてないから、そんな申し訳なさそうな顔しないでいいよ。ほら、パジャマ着ておいで…その格好のままだと俺の理性がぶっ壊れるから。」
私の気持ちを考えて言ってくれる言葉が一層切なくなる。
今日の為にこの3日我慢してたに違いないのに、また我慢させた…。
「ごめんね…」
「謝ることないよ。歩は何も悪くないから。」
「うん。」
虎ちゃんに言われた通りにパジャマを着た。
最後の夜は二人でひっついて眠った。
ずっと手のひらが疼いたまま眠りについた。
私は八雲さんを忘れていない。
虎ちゃんが好きで大事な存在だと本当に思ってる。
なのに拒んだのは事実。
その理由は一つしかない。
【君が好きなんだ】
手のひらに書かれた文字が邪魔をしてる。
帰ったら確かめないと…。
じゃないと先に進めない。
私は虎ちゃんと歩いて行きたい。
だからこのモヤモヤにピリオドを打つ。
この3日間何もなかった。
避けてるみたいに夜になると、決まって虎ちゃんは「さっそろそろ寝ようか。」と言って寝てしまう。
私からなんて、そんな事出来るわけもなく、ただ黙って寝るしかなかった。
虎ちゃんの考えがわからなくて不安になる。
私に魅力がない事はないと、あの日言ってくれた。
大事にしていきたいと…。
でもこれって大事にしすぎなんじゃない?!
女の子にだって性欲はあるんだぞ!
好きな人と愛を確かめたいって思うんだもん。
ベッドの中で背中越しに感じる虎ちゃんの体温が凄く愛おしくて今すぐ虎ちゃんの腕の中で愛してほしいと思ってしまう。
私が寝てしまうまで、虎ちゃんが起きてる気配を感じてる。
起きてるのになんで何もしないのか…まさかこの旅行で私なんかしちゃった!?
八雲さんの事言ったからかなと、ずっと考えてしまう。
やっぱり隠し通すべきだったのかもしれない。
もうっ私のバカ!!嘘も方便っていうじゃん!!
はぁ恋愛ってつくづく難しい。
明日夕方の便で帰る。
今日をいれても2日しかない。
夜は今日が最後になる。
私は虎ちゃんと愛し合う為、虎ちゃんの腕の中で大人になる為、沖縄に来たんだ!
単純に観光で遊びに来たわけじゃない!
今日虎ちゃんが何もしてこなかったら…私から…。
朝ごはんを食べながら今夜の事を決意した。
「歩?どうした、そんな険しい顔して…不味いのか?」
周りに聞こえないように声を潜め話かけられビックリしてしまう。
「ううん。なんでもないし、美味しいよ…。それより、今日の予定は何?」
「今日はなにも考えてないんだ。明日はチェックアウトしてお土産買うのに国際通り行ってから空港へ向かう予定だけど、今日ホテルでゆっくりしてもいいかなって。海行ってもいいし、プール行ってもいいかなって…」
ホテルでゆっくりしてもいいかなって…言われて少しドキドキした。
「じゃプール行きたい。」
「じゃそうしよう!」
朝ごはんを食べ終えて部屋に戻ってから少しゆっくりして、10時ぐらいからプールに行った。
2時ぐらいまで遊んで軽い昼食を取って部屋でゆっくりし、いつの間にか私は寝てしまっていた。
「歩、起きて…。」
虎ちゃんに揺り起こされ目を覚ます。
時間を確認すると6時半に針があった。
「ごめん…寝ちゃってた…」
「いいよ、俺も寝てたし。それより、出掛ける用意して。」
「出掛けるの?」
「うん、晩御飯食べに行こう。」
そう言って虎ちゃんは動き出した。
それにつられるように私も急いで用意し始めた。
ホテルを出て車で連れて来られたのは潮の香りがする海沿いのレストランだった。
案内されて座った席は波の音が聞こえるテラス席で見えない私にも、この店がきっとオシャレなんだと思わせる雰囲気が漂っていた。
「ここコースだから…とりあえず飲み物なんだけど…歩はなにがいい?」
「う〜ん…」
「じゃシャンパンにする?」
「えっお酒ってこと?」
「うん、ノンアルコールのシャンパンあるんだ。」
「じゃそれにする。」
運ばれてきたシャンパングラスは少し大人にしてくれた。
それだけでドキドキする。
この場所が特別な事は私でもわかる。
初めてのシャンパンはシュワシュワしてて炭酸みたいだった。
料理の全てが初めて食べる味で、波の音を聴きながらの食事は大人になった気分だった。
最後にデザートが運ばれてきて、もうすぐ終わるんだと思うと少し寂しくなった。
デザートがきてから虎ちゃんは無口になった。
何故か緊張してる空気がある。
「歩…話があるんだ…」
デザートが終わる頃虎ちゃんが口を開いた。
凄く重たい口調…あぁそっか、やっぱり私の事嫌いになったのかもしれない。
虎ちゃんは席を立つと私のそばに来た。
私の手を取って自分に向けるとしゃがみこんだ。
「歩…聞いて欲しい事があるんだ。」
「なに…?」
「これ…」
そう言って虎ちゃんは私の手に小さな箱を置いた。
開けて触ってみると丸い円のような輪のような物だとわかった。
「これって…指輪?」
「井伊垣歩さん。」
突然名前を言われて気付いた。
「はいっ!」
とたんに虎ちゃんの緊張が伝染する。
「俺にとって愛する女性は歩…君がいればいい。この先俺と二人で一緒に歩いていってくれないか?」
少しの間が空いて虎ちゃんは話し続けた。
「井伊垣歩さん…俺と結婚してください。」
繋がれた手から虎ちゃんの緊張が伝わってくる。
胸が熱くなる。
虎ちゃんは今日のこの日の為にこの旅行を考えてくれたんだと思うと、たまらなく胸が熱くなる。
「歩…?」
声が詰まって出てこない。
ただ首を縦に振るしかできなくて、涙が溢れてくる。
「OKってこと?」
深く深呼吸して答える。
ちゃんと言葉にして言いたかった。
「こんな私でいいの?」
「今のままの歩がいいんだ。」
「…よろしくお願いします。」
私の言葉わ聞くと虎ちゃんは静かに私を抱きしめた。
「ありがとう。」
耳元で虎ちゃんの優しい声が響いた。
虎ちゃん抱きしめられながら手のひらが疼いた。
頭の隅で八雲さんの手の温もりを思い出した。
なんでこんな時に思い出すのか…私は自分の考えてることが少しわからなくなった。
幸せの中にいるのに、八雲さんを思い出すなんて最低だ。
私は虎ちゃんを抱きしめた。
ホテルに着いてシャワーを浴びた。
今日きっとこの後虎ちゃんと…。
髪を乾かしてベッドルームに入る。
「じゃ俺も入ろうかな…」
私が上がったのを見て入れ替わるように虎ちゃんがシャワー室へと入って行った。
シャワーの水の音がしてきたのを確認すると急いでこの日の為に買った下着をつけた。
初めて買った香水も付けた。
準備は出来た。
心の準備も出来た。
忘れたことはないか考えてるとシャワー室が開く音がした。
急いでベッドに入った。
カチッと電気が消える音がした。
ベッドが軋んで音を立てる。
虎ちゃんが後ろにいる。
心臓が飛び出しそう。
「歩…こっち向いて。」
肩に手を置かれ軽く引かれた。
緊張で体が固まってしまう。
「歩…緊張しすぎ…」
ふっと虎ちゃんが笑う。
「だって…。」
「うん、わかる…俺も緊張してるから…ほら。」
虎ちゃんは私の手を自分の胸に当てた。
心臓が凄く早く脈を打っていた。
男らしいがっちりした胸にさらにドキドキする。
虎ちゃんはシャツを着てなかった。
肌を直接感じた手のひらが熱くなる。
「私と一緒…」
「うん。一緒…」
虎ちゃんはゆっくり私の頬にキスをした。
虎ちゃんは着ていた私のバスローブの紐を解いた。
下着姿にせれて虎ちゃんの反応が気になる。
「歩…もしかして新しい下着買った?」
「うん…」
「俺の為に?」
「うん…。」
沈黙が流れた。
なに?変なのかな?
「凄い嬉しい…脱がすの勿体無い…写真撮りたいって言ったら変態だよな。」
虎ちゃんは笑って言った。
でも、脱がす…って言われて私の頭の中はいっぱいだった。
脱がされちゃうんだ…わかってはいるけど改めて言葉で聞くとドキドキする。
「歩…凄く綺麗…」
さっき冗談を言って笑ってた虎ちゃんがいない。
真剣な声。
低くて優しい声。
その声にこれからも呼ばれるんだ。
虎ちゃんが絡めるように私の手を握った。
手のひらがまた疼いた。
虎ちゃんが私の胸に触れた。
「待って!!」
自分でも驚いた。
なんでそんなこと言ったのか。
なんで虎ちゃんを拒んだのか…。
「怖い?」
虎ちゃんが優しく聞いてくれた。
「うん…。」
怖くなんてなかった。
こうなる為にこの旅行も決めて準備もして来たのに今更、恐怖なんて生まれるわけない。
なのになんで…??
「じゃ今日はやめよう…焦ることじゃないし俺はそれだけが目的でもないし。」
そう言って私の頭をくしゃっとした。
「なんて顔してんだよ…俺は気にしてないから、そんな申し訳なさそうな顔しないでいいよ。ほら、パジャマ着ておいで…その格好のままだと俺の理性がぶっ壊れるから。」
私の気持ちを考えて言ってくれる言葉が一層切なくなる。
今日の為にこの3日我慢してたに違いないのに、また我慢させた…。
「ごめんね…」
「謝ることないよ。歩は何も悪くないから。」
「うん。」
虎ちゃんに言われた通りにパジャマを着た。
最後の夜は二人でひっついて眠った。
ずっと手のひらが疼いたまま眠りについた。
私は八雲さんを忘れていない。
虎ちゃんが好きで大事な存在だと本当に思ってる。
なのに拒んだのは事実。
その理由は一つしかない。
【君が好きなんだ】
手のひらに書かれた文字が邪魔をしてる。
帰ったら確かめないと…。
じゃないと先に進めない。
私は虎ちゃんと歩いて行きたい。
だからこのモヤモヤにピリオドを打つ。