暗闇の恋
電話の声がいつもと違い低く怖い印象だった。
呼ばれて行った場所は家じゃなく、近所の公園。
急いで行くとブランコの揺れる音がする。
近くに言って恐る恐る声をかけた。
「虎ちゃん…?」
「あぁ…」
やっぱり声が怖い。
「お酒飲んでるの?」
アルコールの匂いがした。
返事がない。
「虎ちゃんお酒弱いのに…何かあったの?」
それでも返事が返ってこない。
恐怖より心配が多くなる。
「ねぇ虎ちゃん?」
「八雲 郁。」
不意に言われた名前にドキッとした。
「えっ??」
動揺を隠せない。
「あいつとは関係ないって言ったよな!?」
「えっなんで?」
「さっきあいつと会って来たよ…付き合ってるんだってな?」
「それは…でも虎ちゃんの方が好きだよ!!」
自分の言った言葉が酷すぎると思った。
「でも?方が?なんだよそれ…歩は俺と会ってる時あいつのこと考えてたんだよな。」
「違っ…」
「なにが違うんだよ!!」
怒鳴った虎ちゃんが私に詰め寄り両腕を掴んだ。
こんなにきつく掴まれたことなんてない。
いつでも大切にしてくれてた。
それだけ傷付けてるんだと思った。
「なんでそうなるんだよ!」
揺らされた体に力が入らない。
「歩は俺の彼女だろ?!婚約者だよな?なのに、あいつともやってたのかよ!!」
「やめてよ!!そんな言い方虎ちゃんらしくないよ!」
「なんだよそれ…俺らしって何?いつも優しくて、いつも歩のこと考えて言動するのが俺らしいのか?!」
「そんな事言ってない…それに彼とはそんな関係じゃないよ。私…虎ちゃんとしかしてない。」
そう言うと虎ちゃんは笑いだした。
また恐怖が生まれてくる。
「虎ちゃん…?」
「そっか…そうゆうことか…。」
「なに?」
「歩の心はあいつがいいんだよ…。」
何を言ってるのかわからない。
「すぐにでも抱かれる事なんて出来ただろ?なんでそれをしなかった?俺への罪悪感から?俺に抱かれてたから?いや、どっちも違う…歩はあいつのこと本気で好きだからこそ出来なかったんだよ…。」
「そんな事…。」
「もう…俺は歩に会えない。」
「待って!!イヤだ。私、ちゃんと虎ちゃんが好きだよ!?」
虎ちゃんを掴もうとした手は空を切った。
「ごめん。俺がもう歩を好きじゃない。」
嘘だ。虎ちゃんの声が嘘を付いている。
「お願い…虎ちゃんを失うなんて私耐えれない…。」
「歩…それは恋でも愛でもないよ…歩にとって俺は家族みたいなもんだったんだよ。男女の関係になってはいけなかったんだ。」
一歩一歩と虎ちゃんが離れて行く。
足を動かすたび砂の音が聞こえる。
泣いて声にならない。
「待っ…お願い…。」
「ごめん…。」
その言葉を最後に虎ちゃんは一気に走り出した。
砂が擦れる音が遠ざかって行く。
私は咄嗟に追いかけた。
けれど見えない私には虎ちゃんに届く前に躓いてしまって派手に転んでしまう。
遠ざかった足音が一旦止まった。
なのに、再び足音は動き消えて行った。
今までなら真っ先に来てくれてたのに…本当に虎ちゃんとの関係は終わったんだと気付かされた。
体を起こし膝に手をやると微かにヌルッとした。
手探りで手から離れた白杖を探した。
その手にポツリと水滴が落ちてきた。
その一粒はあっという間に大粒の雨になった。
「まいったな…。」
雨音にかき消される私の声は虚しく響いた。
自分の撒いた種は自分の首を絞めた。
どれだけ大きな声で泣いても雨でかき消される。
何度虎ちゃんの名前を呼んでも、もう届かない。
もう来てくれない。
“それは恋でも愛でもないよ”
じゃなんなのよ!?私にはわかんないよ!!
雨は激しく降り始めた。
どんどん服が濡れていく。
なのに立ち上がる気力がない。
白杖を探すことさえしたくない。
虎ちゃん…虎ちゃん…虎ちゃん…。
心がこんなに虚しく感じるなんて…これが愛じゃないって言うの?
私は誰を愛してたんだろう。
私は虎ちゃんを愛して…た?!
茫然と雨に打たれながら考えても頭はどんどんボーッとしてくる。
雨の打ち付ける音の中、急に声がした。
「歩!!何があったの!?」
「お母…さ…ん…?」
お母さんの今にも泣きそうな声を聞いた瞬間、私は意識を失った。
なんで…お母さん…が、いて…るんだ…ろ…?
呼ばれて行った場所は家じゃなく、近所の公園。
急いで行くとブランコの揺れる音がする。
近くに言って恐る恐る声をかけた。
「虎ちゃん…?」
「あぁ…」
やっぱり声が怖い。
「お酒飲んでるの?」
アルコールの匂いがした。
返事がない。
「虎ちゃんお酒弱いのに…何かあったの?」
それでも返事が返ってこない。
恐怖より心配が多くなる。
「ねぇ虎ちゃん?」
「八雲 郁。」
不意に言われた名前にドキッとした。
「えっ??」
動揺を隠せない。
「あいつとは関係ないって言ったよな!?」
「えっなんで?」
「さっきあいつと会って来たよ…付き合ってるんだってな?」
「それは…でも虎ちゃんの方が好きだよ!!」
自分の言った言葉が酷すぎると思った。
「でも?方が?なんだよそれ…歩は俺と会ってる時あいつのこと考えてたんだよな。」
「違っ…」
「なにが違うんだよ!!」
怒鳴った虎ちゃんが私に詰め寄り両腕を掴んだ。
こんなにきつく掴まれたことなんてない。
いつでも大切にしてくれてた。
それだけ傷付けてるんだと思った。
「なんでそうなるんだよ!」
揺らされた体に力が入らない。
「歩は俺の彼女だろ?!婚約者だよな?なのに、あいつともやってたのかよ!!」
「やめてよ!!そんな言い方虎ちゃんらしくないよ!」
「なんだよそれ…俺らしって何?いつも優しくて、いつも歩のこと考えて言動するのが俺らしいのか?!」
「そんな事言ってない…それに彼とはそんな関係じゃないよ。私…虎ちゃんとしかしてない。」
そう言うと虎ちゃんは笑いだした。
また恐怖が生まれてくる。
「虎ちゃん…?」
「そっか…そうゆうことか…。」
「なに?」
「歩の心はあいつがいいんだよ…。」
何を言ってるのかわからない。
「すぐにでも抱かれる事なんて出来ただろ?なんでそれをしなかった?俺への罪悪感から?俺に抱かれてたから?いや、どっちも違う…歩はあいつのこと本気で好きだからこそ出来なかったんだよ…。」
「そんな事…。」
「もう…俺は歩に会えない。」
「待って!!イヤだ。私、ちゃんと虎ちゃんが好きだよ!?」
虎ちゃんを掴もうとした手は空を切った。
「ごめん。俺がもう歩を好きじゃない。」
嘘だ。虎ちゃんの声が嘘を付いている。
「お願い…虎ちゃんを失うなんて私耐えれない…。」
「歩…それは恋でも愛でもないよ…歩にとって俺は家族みたいなもんだったんだよ。男女の関係になってはいけなかったんだ。」
一歩一歩と虎ちゃんが離れて行く。
足を動かすたび砂の音が聞こえる。
泣いて声にならない。
「待っ…お願い…。」
「ごめん…。」
その言葉を最後に虎ちゃんは一気に走り出した。
砂が擦れる音が遠ざかって行く。
私は咄嗟に追いかけた。
けれど見えない私には虎ちゃんに届く前に躓いてしまって派手に転んでしまう。
遠ざかった足音が一旦止まった。
なのに、再び足音は動き消えて行った。
今までなら真っ先に来てくれてたのに…本当に虎ちゃんとの関係は終わったんだと気付かされた。
体を起こし膝に手をやると微かにヌルッとした。
手探りで手から離れた白杖を探した。
その手にポツリと水滴が落ちてきた。
その一粒はあっという間に大粒の雨になった。
「まいったな…。」
雨音にかき消される私の声は虚しく響いた。
自分の撒いた種は自分の首を絞めた。
どれだけ大きな声で泣いても雨でかき消される。
何度虎ちゃんの名前を呼んでも、もう届かない。
もう来てくれない。
“それは恋でも愛でもないよ”
じゃなんなのよ!?私にはわかんないよ!!
雨は激しく降り始めた。
どんどん服が濡れていく。
なのに立ち上がる気力がない。
白杖を探すことさえしたくない。
虎ちゃん…虎ちゃん…虎ちゃん…。
心がこんなに虚しく感じるなんて…これが愛じゃないって言うの?
私は誰を愛してたんだろう。
私は虎ちゃんを愛して…た?!
茫然と雨に打たれながら考えても頭はどんどんボーッとしてくる。
雨の打ち付ける音の中、急に声がした。
「歩!!何があったの!?」
「お母…さ…ん…?」
お母さんの今にも泣きそうな声を聞いた瞬間、私は意識を失った。
なんで…お母さん…が、いて…るんだ…ろ…?