ハコイリムスメ。
身構えたのに…
美佐の怒りの理由を知ったら、力が抜けた。


「なんでサインもらってくれなかったの!?」


「…はぁ?」


俺は自分の耳を疑ったね。
何言ってんだ、美佐は。


「今一番人気の花田レイコちゃんだよ!?なのにレイコちゃんの話じゃ…あ、昨日の夜のテレビで話してたんだけどさ、レイコちゃんが。ちとせったら名乗りもしないでさっさと帰ったって…なんで!?」

きゃあきゃあまくし立てる美佐に、より一層注目される俺。

「なんで…と言われましても」
「まさかちとせ、レイコちゃん知らないの!?」

ええーっと。

「うん」





「うっそぉ!!!!!」





美佐の大声で、さっきからこっちをちらちら窺っていた女の子たちが寄ってきて、さらにまくしたてる。

「やっぱりあなたですかぁ!!レイコちゃん助けた王子様!!」
「え、や…」
「カッコよかったです~あのキック!!」
「はぁ…」


美佐の声がでかすぎて、筒抜け。
なぜか囲まれる俺。

「名前教えてくださいーっ!」
「あ、…は?」
「ちとせは美佐のなんだから!気安く近寄んないで!」

猫のように威嚇する。
花田レイコには怒らないくせに。美佐、意味不明。
つーか名前バレたぞ。

「ちとせくんかぁ!」



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