ハコイリムスメ。
注目されることに慣れていない俺は耐えきれなくなて、美佐の腕を掴んで慌ててその場から逃げだした。
「…………なぁ」
「………」
「みーさー」
「………」
映画館についても美佐は口をきこうとしない。
ポップコーンとティーソーダを買ってやってもしかめっ面。
あー…
俺が何をしたと?
ただバカ店長に頼まれて助けただけじゃん。
サインは仕方ないじゃん、知らなかったんだからさぁ…あの花田カイコ、とかなんとか。
「美佐」
「…ちとせさっき、ニヤニヤしてた」
「………はぁ?」
美佐が言うには、さっき時計台のベンチで囲まれていたとき、俺の顔が緩んでいたらしい。
それはもう、完璧なほど。