ハコイリムスメ。




映画が終わっても、俺はマヌケ面をしたままぼうぜんとしていた。
やっべ、マジだせぇ。だってさ…開いた口か塞がらない…。



「ほんっと、レイコちゃんかわいかった~憧れ~!」

美佐が前から見たがっていた映画は、「恋と愛と」っていう、恋愛ものの映画。
これまた買ってやったパンフレットによれば、カワいい女の子が難病を抱えてて、カッコいい男と出会って、物語が進んでいく、みたいな。
1人だったら絶対見に来ない、ベタな設定の、しかも2時間半。

その「難病を抱えてる、カワいい女の子」が、あの花田カイコ。





「は、花田カイコ…」

美佐がそう言った俺の顔をマジマジと見つめ、吹き出した。

「カイコじゃないよ!!なんで間違えるかなぁー…」
「え?」
「レ・イ・コ!!花田レイコ!!」
「ああ…どおりで。カイコなんて変な名前だと思ってたとこ」



薄暗いおかげで、俺に気付くやつは1人もいなかった。
明かりが落とされる直前、2人組に指差されたけれど、軽く流した。





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