ハコイリムスメ。
特番で普段の倍─つまり2時間─の生放送のお笑い番組のゲスト。
画面右下の文字には、
【レイコちゃんが駆けつけてくれました!!】
と表示されていた。
『レイコちゃん、遅刻ぎみでしたねー』
『ごめんなさぁいー。来る途中、王子様に会ってー』
………はぁ…
また余計なことを…。
「葵、チャンネル変えていーよ。俺、シャワー浴びてくるからさ」
「わかったー」
葵がリモコンを持ったのを見届けてから、洗面所に向かった。
多分、前の撮影のあと、生放送に出るために移動する予定だったんだろう。
あの場所はテレビ局同士のほぼ中間だし。
事故があったようで、救急車とパトカーが止まっていて、たくさんの車が足止めを食らっていた。
人もだから、多かった。
本来車で移動するところを、間に合いそうもないから、歩いていたんだろう。
花田レイコの回りには少なくとも3人のゴツい男が居た。
「間、悪すぎだろ俺…」
ぐったりした気持ちでTシャツを脱ぐ。
ジーパンのポケットにケータイを入れっぱなしにしていたのを思い出して、手に取った瞬間、また美佐からの着信があった。