ハコイリムスメ。
前回同様、電車に長々と乗り、ようやく目的の駅直前まできた。

葵は隣で眠っていて、最初は危なっかしげにかくかく揺れていた頭が、今は俺の肩に乗っかっていた。


俺と同じシャンプーの匂いが、鼻をくすぐる。


クーラーと一緒に忙しなく回り続けている扇風機からの風が、時折、少女の柔らかな栗色の髪を揺らしていた。



「あーおいー、起きて」

電車が減速を始めたので、軽く肩を動かすと、んー?と声をあげて起きた。

「降りるよ」
「…………ここどこ?」

完全に寝ぼけている。
やれやれ、と息を吐いたとき、窓の外をホームの風景が徐々に遅くなっていくスピードの中流れ始めた。

静かに停止、軽い衝撃、プシューッと音を立て、ドアが横に滑る。


「行こ」

まだ夢から醒めきらない葵と手を繋いで、電車から降りた。









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