ハコイリムスメ。
「覚えてる?ほら、前にも来ただろ?」
「覚えてるー。えっと…さっちゃん?」
「そー。よくできました」
ポンッと頭に手を乗せた。
ただ単に、足を踏み出す度に揺れる髪に、触れてみたかったんだけどさ。
すれ違う人はほとんど無く、両脇にはのどかな田舎の風景。
都会育ち、都会住みの俺でも、どこか懐かしい気分になる。
ピチュピュ、と鳥が鳴くので、口笛でハモろうと音を出した。
「笛?」
「口笛ー」
ピュー、ピューと音階をやって聴かせると、目をキラキラさせた。
「やってみたい!!」
「いきなりは無理だなぁ。基本、練習しなきゃな」
「えー?キホン?」
しばらくすると、あの建物が見えてきた。
時間は…
見た待ち受けの時計を見て、小さくガッツポーズ。
完璧。
20分も前だ。
これで文句言われる心配もないだろう。